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王将戦 | 羽生善治vs藤井聡太


 先日、羽生善治さんと藤井聡太さんとで争われた王将戦を扱ったNHKのスペシャル番組を見た。新旧の天才同士の戦い。とても興味深かった。

 先に四勝したほうが勝者となる王将戦。対戦前には、藤井圧勝を予想する人が多かったようだが、途中まで、互いに二勝二敗だった。結果は、藤井棋士が四勝二敗でタイトルを勝ち取ったが。。


 番組では羽生善治九段にインタビューする形だったが、印象に残った言葉が2つある。

 AIについて問われたとき、こんなことを羽生九段は言った。AIが新バージョンになると、旧バージョンはたいてい負ける。今のAIが推奨する手は、一年後には最善手ではなくなる可能性が高い。ということは、今AIが出す答えは必ずしも完璧な手ではない。そこにつけ入る隙があるはずだと。藤井棋士の指す手は、現在のAIが推奨する手と一致することが多いという。だから、勝てるチャンスはあるはずだと言いたいのだろう。

 もう一つ印象に残った言葉は、「藤井棋士と対戦することは楽しいですか?」という記者の問いかけに答えたもの。WBCになぞらえてこんなことを言った。「ここならどうだという気持ちで投げた球が、打たれる。打たれたら、別なコースに球を投げる。しかし、また打たれる。どこに投げても打たれることは、楽しいと思いますか?」と。
 楽しいとも楽しくないとも答えなかった。しかし、藤井棋士との将棋は大変だということだろう。


 将棋はスポーツではないけれども、他のスポーツとは違って「感想戦」がある。勝負の決着がついてから感想戦が行われる。実戦より短い時間だが、お互いに、指し手がもしこうだったらどうなっただろうかと見当し合う。言葉こそ丁寧だが、火花が散るようなやりとりが続いた。どちらも求道者のように見えた。


 もしかしたら、ではあるが、AIがこれからもどんどんバージョンアップしていけば、やがて、可能性として、先手が必勝なのか、それとも、後手が必勝かということも分かるかもしれない。


 いずれ、人間が絶対に勝てないAIが登場するかもしれないが、将棋を作ったのはAIではなく、人間だ。

 AIと人間と。勝負では、人間が絶対負けるという日が来るかもしれないが、将棋というゲームを作ったのは人間である。



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