Super Monster Sayoko | 連載小説(第1話 )
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Super Monster Sayoko(第1話)
私のブログのコメント欄に、見ず知らずの女からメッセージが届いた。
「あなたのことが好きなんです」
正直に言って、嬉しいという感情はまったく起こらない。当たり前だ。相手の記事など1つも読んだことがないし、そもそも私は女のアカウントの存在さえ知らなかったのだから。
私は差し障りのない返事を返した。
「お読みいただきまして、ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします」
私はこう返事を残して、他に来ていた別のコメントへレスを返し始めた。しかし、これが地獄の日々の始まりになろうとは夢想だにしていなかった。
明くる日も、女からからメッセージが届いた。
「私のことを気にしてくださったから、またメッセージを書いてしまいました」
私にはわけがわからなかった。「気にしてくださったから」と書いてあるが、まったく気にとめていなかったから。その気にさせるような文言を書いた覚えがないから。
あとでわかったことだが、「ありがとうございます」「これからもよろしくお願いいたします」という言葉を真に受けたらしいのだ。
「もうこれで終わりだな」と思ったって、社交辞令だ。「これからもよろしくお願いいたします」くらいの言葉に、それほど強い思いを込めているわけではない。なかば、挨拶のようなものだ。
しかし、佐代子と名乗る女は違った。「よろしくお願いいたします」を「愛しています」と解釈する女だった。
「お声を聞かせてくださりありがとうございます。あなたの佐代子より」
別に私は佐代子という女に語りかけたつもりは更々なかった。ただ広くフォロワーに向けて投稿したに過ぎない。
それから、佐代子はいちいち私の投稿する記事にランダムにコメントを書き散らし始めた。
私がカントのことについて書けば、ニーチェの「ツァラトゥストラ」について、どんな教科書にも載っているような表面的な知識をひけらかす。
フランス文学について書けば、「私はパリに行ったことがあります」という、およそ関係のないことを書き散らす。
私の書いたことには何の感想もなく、佐代子はただ彼女自身が思い付いたことを書き散らす。私は佐代子に対し、嫌悪感以外の何物も持てないからブロックすることにした。
「なんで私のことをブロックするのですか。とても悲しいです。あなたの佐代子より」
好かれるようなことを何もしていない私は、ただただ恐怖するしかなかった。
…つづく
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