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ギャグ小説 | ドライブの思い出

(1)

 自分で車を運転するようになって、他の人の運転する車に乗ることがほとんどなくなった。
 たまに他の人が運転する車に乗ると、「えっ?」と思うことがある。安全運転でけっこうだけれども、「今、発進できたんじゃないの?」とか「この黄信号の場合、急ブレーキをかけてまで止まる必要はなかったんじゃないかなぁ?」などと思ってしまうことがある。
 運転席から見える光景と、助手席や他の席から見える光景や心理状態とは、きっと異なるものなのでしょう。

 とはいえ、人の運転している車に乗ると面白いこともあったなぁ。昔話になるけれども「これはスゴイ!!」と思ったことがある。元カレの運転する車に乗ったときの思い出をひとつ書いておこう。もうかれこれ30年も昔の話だけど。

(2)

 そうあれは、大学時代の3年生ときだった。その当時、私はすでに免許は持っていたが、車を持っていなかった。
 ある冬の日、学校が休みだった日に、当時お付き合いしていた同い年で私と同じ大学に通う彼から電話がかかってきた。

「急なんだけどさ、暇だから今から一緒にスキーに行かない?」

 突然の申し出にうれしいと思いながらも、本当に突然のことで何の準備も出来ていない。幸いスキーウェアは一着持っていたけれども、まだ雪が降り始めて日が経っていなかったから、スキーに行くという発想がなかった。

「わかった。でも何の準備もしていないから、一時間くらい待ってもらえるこな?」

電話の向こうで、せっかちな彼は言った。

「一時間かぁ。もう少し早く会えないかなぁ?」

「なるべく早く準備するね」と私は答えた。

(3)

 ささっとメイクして、スキーウェアだけ用意して、およそ一時間後、待ち合わせの場所になんとか到着した。

「お待たせ。待った?」
「いや、スタンドに行って満タンにしたり、その他、カイロとかいろいろ準備してた」
「ありがとう。スキーかぁ。久しぶりだなぁ。雪道だけど大丈夫かな?」
「タイヤは交換してあるし、一応チェーンも準備してある」

(4)

 彼とは付き合いはじめたばかりで、車の中では会話が滞りがちになることがあった。
 普段、頼りがいのある彼だけど、まだ、女の子となにげない話をすることは苦手だったみたい。それに加えて、当時はカーナビもあまり一般的ではなかったから、道を覚えて運転することも大変だったろうな。
 たぶん会話が途切れたときのため用に、彼は当時リリースされたばかりのCDシングルをエンドレスで流して歌っていたっけ。


Boy Meets Girl 
恋してる瞬間
きっとあなたを感じてる

「この歌のうまい人、なんていう人だっけ?」

私は知っていたけど、彼にあえて話をふってみた。

「広瀬香美っていうんだよ。高音まで声を出せてすごいね。あ、もう少しで一番高いところ。一緒に歌ってみる」

「歌ってみてよ👩」

👨♪
よくあたる 星占いに
そう言えば 書いてあった
今日 会う人と結ばれる
今週も来週もさ来週もずっとoh yeah!


 ちょっと音程は外したけれど、彼は見事に歌い切った。けれど、そのあと、むふふふ👩。

「ヤバい、ここは右折しないとけなかった。まっすぐ行っちゃうとまずい。Uターンしなくっちゃ」

 車はどんどん直進を続けたが、一本道でなかなかUターンできる場所がなかった。どうするんだろう?、と思ったとき、一軒のガソリンスタンドが見えてきた。

「よし、あそこに寄っていこう」

 まもなくして、私たちはスタンドにたどり着いた。

 ついでにガソリンを入れていくんだろうな。
 彼は「オーライ、オーライ」という誘導にしたがって給油口のレーンに入っていった。しかし、ニコッと笑って、そのままスルーして、ガソリンスタンドをあとにした。

 私は驚いてしまった。
「どうして給油しなかったの?」 

「どうしてって、まだいっぱい入ってるから、入れる必要はないでしょ」

「それはそうだけど、ガソリンスタンドを文字通りスルーする人って珍しいんじゃないの?」

「へえ、そうなのかなぁ?」


おしまい

フィクションです💝。
たまたま、「#ギャグ小説」というタグを見つけたので書いてみました😊。
あまり面白くなかったらごめんなさい。


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