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連載小説(25)漂着ちゃん

 地下室を出ると、二人の護衛官が待機していた。

「あなたが部屋に戻るのを確認するまで付き添わせていただきます」

 地下室へ行く時と同じように、私は両脇を二人に挟まれながら、エレベーターにのった。

「では、これで」

 扉が開くと、ナオミがいた。

「お疲れ様です。待っていました。で、どんなお話でしたか?」

 私は手身近に、所長との話をナオミに伝えた。

「所長、というか、お父様のことは、私からは何も言えません。もちろん思うところはありますが、あなたの決断に影響を与えるようなことは言いたくありません。私が言えるのは、私自身がどうしたいかということと、ヨブをどう育てたいかということだけ。。。」

「ナオミはどうしたい?」

「この時代に生きたい。ヨブともあなたとも、ずっと一緒にいたいだけです。エヴァさんとも…いまさら、他の時代に行く理由がありません」

「そうだよな。たしかにいまさら他の時代に行く理由がないな」

「あとはエヴァさんとマリアちゃんね」


 その夜、私は一人で所長をどうするべきかということ、人間とはなにかということについて考え始めた。

 人間とは、精神と肉体とか合致したものである。肉体のない精神も、精神のない肉体も存立し得ないと、私はずっと考えてきた。しかし、所長と話したとき、私は人間の熱を感じたのだ。

 幻かもしれないが、じかに体で感じる熱はなくても、心で感じる熱もいうものもある。
 所長というAIを消すことは簡単だ。ただの肉体を持たない「概念」なのだから。しかし、そこに熱を感じてしまった以上、簡単に消し去ることはできない。私はいったいどうしたらよいのだろうか?ナオミともエヴァとも、そして「父親」としての所長とも、共存できる道はないかと私は考えつづけた。


…つづく


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