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短編 | メガネ初恋

 わたしはある工場で大量生産されるメガネの1つとして生まれた。生まれながらにしてその用途は決まっている。わたしをかけた人の目が輝くこと。よりよくものを見えるようにして差し上げること。それが唯一の生きる目的。

 わたしのフレームはピンク色。しかし、それはどうでもよいこと。かけた人の視力を支えるのがわたしの役目なのだから。

「あの、このメガネのフレームの色、とても気にいりました。けど、わたし、視力はいいんです。このレンズは外していただけますか?」

「もちろん大丈夫です。レンズは外しましょう」

 かくしてわたしの命であるレンズは取り外された。わたしはピンク色のフレームだけとなり、彼女に購入された。

「わたしは何のために、この世に生まれたんだろう?人の目になることがわたしの唯一の存在価値なのに」

「ねぇ、このメガネ、ダテなんだけどさ、とってもかわいいでしょ?」

 彼女は彼氏に自慢げに語りかけた。

「これで良かったんだろうか?」


(408文字)


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