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【マジックミラー】有栖川有栖


※インスタに投稿した記事より、一部加筆修正してお届けいたします。


 本格的な王道ミステリーを継承している(と評されている)有栖川有栖先生ですが、実際に代表作のタイトルを並べてみるとなんとなく想像出来ますが、エラリィ・クィーンを踏襲するかのようなロジカルなミステリーが専門だと考えて、当たらずも遠からずでしょう。
 しかし、本書は、クイーンからは程遠く、F・W・クロフツに傾倒したかのような本格的アリバイトリックに挑んだミステリーです。

 と、いきなり偉そうなことを書きましたけど、実は有栖川先生の作品をそれほど沢山読んだわけではありません。それでも、有栖川作品で、ここまで徹底したアリバイトリックに注力したものは、珍しいのではないかと思いました。
(有栖川さんのファンの方、違っていたらごめんなさい🙏🙏)

 タイトルの「マジックミラー」にも、様々な意味が込められています。でもまぁ、それはネタバレにもなりかねないので、ここでは触れないでおきます。
 それよりも、登場人物のミステリ作家が大学で講義をするシーンがあるのですが、ここでの「アリバイトリック」をテーマにした講釈は、何度でも読み返したいぐらいに奥が深く、興味深いものでした。
 メタフィクションとはまた別物でしょうけど、作中にもう一冊専門書があるような感覚で、ここだけでも読む価値はあると思います。

 もちろん、前編を通じたミステリー小説としての完成度も、ものすごく高いと思います。ごめんなさい、また偉そうなこと言いました(汗)
 でも、崩れそうで決定打が出ない一つ目のトリック、そして、斬新で鮮やかな二つ目のトリック、どちらもお見事としか言いようがありません。

 実は、ミステリ小説が大好きな私ですが、好きなジャンルは密室トリック、物理トリックなどの論理的なもの、若しくは叙述トリックが好みでして、クロフツや鮎川哲也さんなどのアリバイトリック、西村京太郎さんのような時刻表の盲点を付くトラベルミステリーなどは、やや苦手でした。
 でも、本書は完璧なアリバイを崩したり、時刻表と睨めっこしたりと私の苦手な要素が盛り沢山なのに、すごく面白くて目が離せず、大満足でした。

 ただ、残念な点を強いて一つだけ挙げますと、少し文章が固く感じまして、他の有栖川作品(大して読んでいませんが)と比べると、やや読み辛く感じました。
 もっとも、それは私の読書力の問題かもしれません。


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