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【ウツボカズラの甘い息】柚月裕子

※インスタに投稿した記事より、一部加筆修正してお届けいたします。


 今日のレビューは、特に長い上、ネタバレも含みますので、どうぞご注意ください🙇‍♀️🙇‍♀️

 数年前に読んだ『検事の本懐』が面白くて、他の作品も読もう! と思いつつ、なかなか機会のなかった柚月裕子作品、久し振りに手に取りました。

 と言っても、この本を購入したのは一年以上も前のこと。息子が所属するボーイスカウトのバザーで、50円で購入しました(苦笑)
 表紙カバーはかなり傷んでおり、普通なら廃棄処分にしかならない状態です。でも、中身はまぁまぁ綺麗で、読む分には問題なかったのと、収益がスカウトの活動費の足しになるとのことなので、寄付のつもりで購入しました。
 50円だけど……(汗)


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ここから先は、ネタバレのオンパレードになります。
未読の方で読む予定のある方は、気を付けて下さい。
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 物語は、「鎌倉の貸別荘で起きた殺人事件」の捜査を行う警察目線と「ごく普通の日常を暮らす主婦」文絵が同級生と出会い、変貌を遂げていくという、二つのお話が同時進行で流れていきます。
 まぁ、この二つの流れが一つになった時に、おそらく文絵が事件に関係してるんだなってことは、誰にでも予想出来ます。
 もっと言えば、ウツボカズラが食虫植物だと知っている方は、改めてタイトルを見た時に、文絵が「甘い息」に誘われて罠に嵌めらているってことにも気付きます。
 実際、この同級生は怪しい(妖しい)雰囲気がプンプン漂っているのです。

 それでも、スピーディな展開は、リーダビリティにも優れ、ドキドキしっぱなしで目が離せません。分かっていても、平凡な主婦がどのように罠に嵌っていくのか、その過程を追うだけでも面白いです。
 しかも、この本がスゴイのは、そこで終わりじゃなく、その後に最も大きな展開が用意されていることです。むしろ、そこからが本題とも言えるでしょう。
 そんなドラマティックなストーリーに魅力的な登場人物、ありふれた日常に潜む狂気、金と欲望、マルチ、成り済まし、新興宗教……540ページにも及ぶ長い物語ですが、社会派ドラマとしての質がとても高く、一気読みしてしまいました。

 しかし、ミステリ小説としての醍醐味は……少し疑問符が付きます。
 では、ミステリ小説の醍醐味とは?
 やはり、謎解き、意外性、衝撃、伏線……これらをキーワードにしたハラハラドキドキ感を味わうことではないでしょうか?
 そういった視線でこの本を読むと、おそらく後半に差し掛かったぐらい(だったかな?)、二つの話が一つに繋がり、文絵の子どもについて衝撃的な事実が判明する辺りが、事件とは直接関係ないとは言え、この本の「ミステリ」としてのクライマックスだったように思います。
 そう言えば、序盤に出てくる文絵の子育ての様子に違和感があったのよねぇ……と後からそれが伏線だったと気付くのです。
 でも、読んでる段階では全く思いもしなかったことですから、事実を知った時の衝撃は凄ましいものがありました。

 一方で、前述したように、物語は二つの話が一つに結び付き、あぁ、そういう罠だったのね……と収束に向かうと思いきや、そこからまた二転三転していくのです。
 そこから一気に加速する疾走感は秀逸で、それこそハラハラドキドキの連続ですが……ラスト70ページ辺りで、突如と三つ目の物語が発生するのです。
 実は、それは真犯人の半生なんです。

 とても残念なことに、そこまでに犯人に直接結び付くような情報や伏線は皆無です。一人ずつ、新容疑者を追っていくうちに、新たな人物が出てきて、最後に犯人にたどり着く……その過程は確かに面白かったです。
 でも、ミステリーとしてはイエローカードじゃないのかな? と個人的には思いました。

 と、やや辛口レビューになりましたが、それもこれも期待が大き過ぎた反動によるものでして、読んでる間はかなり夢中になりましたし、実際、すごく満足感もあります。


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