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【追想五断章】米澤穂信

※インスタに投稿した記事より、一部加筆修正してお届けいたします。


 個人的には、久し振りにすごく良い本に出会ったと感動しています。もちろん、良い本(良本)の定義は人それぞれでしょうが、私の好みが基準ならド真ん中を“変化球”で射抜かれた感じです。
 そうです、ストレートじゃないのです。
 説明が主観的になりますが、ズバッと突き刺さった感じはなく、ゆっくりとジワジワとこみた上げてきたのです。

 さて、物語です。
 主人公の大学生が、「亡き父の遺した小説を探して欲しい」と依頼を受けるところから始まります。この静かながらも意味深で、やや不可思議なスタートは、いきなり惹きつけられました。
 しかも、時代背景はバブル崩壊直後という設定なので、少し退廃的で陰鬱な雰囲気が漂っており、物語の提示部との親和性もバッチリに感じました。
 そして、その「探して欲しいもの」は、五つのリドルストーリー(結末のない話)なのです。

 ここまでだけでも、十分に興味を唆られる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 ネタバレになりますので、ストーリーそのものには深くは踏み込みませんが、依頼者の亡き父が書いたとされる五つの小説の断章を読み解きながら、そこに隠された様々な秘密(コレが謎解きに当たります)が判明してくるに連れ、自然と主人公自身も人生を見つめ直すという、単純なミステリの枠にはとても収まりきらない、純文学のような渋さや奥深さも感じ取れました。

 米澤穂信先生の他の作品とは、少し一線を画している面も見受けられます。なので、米澤穂信先生のファンの間でも、好き嫌いが別れる作品かもしれません。
 ファンじゃなくても、終始仄暗い空気が纏わり付いており、それが合わない人もいると思いますが、個人的には、どことなく懐古的な雰囲気に儚げで静謐な文体がしっくりときて、じわじわと込み上げてくるストーリーを堪能出来ました。
 蛍光灯より、蝋燭や水銀灯が似合う物語だとは思います……イミフかな(汗)
 もちろん、謎解きにも惹きつけられました。


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