マガジンのカバー画像

対話体小説集

16
地の文を使わず、全編会話文だけで構成された物語のことを、対話体小説といいます。 代表的な作品として、マヌエル・プイグの『蜘蛛女のキス』や恩田陸の『Q&A』、小林泰三の『アリス殺し…
運営しているクリエイター

#小説

警部、お願いします!

【scene1】

「警部、お願いします!」
「これは、なかなか厄介なヤマだな」
「ということは、何か分かったのですか?」
「あぁ、幾つか興味深いことがな」
「……と言いますと?」
「先ず、これは明らかに単独犯、又は複数名による計画的、若しくは衝動的な犯行だ」
「なるほど。と言うことは……」
「そうだ。犯人は、おそらく内部関係者、或いは外部の人間だろう」
「だとすると、仰るとおり、厄介なヤマになり

もっとみる

クラムボンは笑ったよ

——ということでして、本日は賢治童話の研究においては第一人者と言ってもよいでしょう、花巻文化大学の鈴木孝志教授、そして、先月に『クラムボンの意外な正体』という著書を出版されました、フリーライターの鶴田光義さん、両氏にお越し頂きました。お二方、どうぞよろしくお願いします。

「こちらこそ、よろしくお願いします」
「あぁ、どうもどうも」



——では、早速ですが……鈴木教授の見解では、やはりクラ

もっとみる