さわ象/詩作

傷とその周辺、映画と音楽。 Honky-tonk わたくし。音読推奨しております!

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マガジン

  • 映画の詩

    見た映画の印象をもとに自由に書きました。映画タイトルはハッシュタグに…

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新星

新星 磨かずして光る玉などなし 傷口に指を差し入れ、かきまわす 銀色の玻璃の翅をむしられ、葉影でじっと息を潜めている蜻蛉どもへ 黒天鵞絨の翅をちぎられ、泥道をよろよろ歩くしかない揚羽蝶どもへ 脚をもがれ、虹色の箔の背中を、灼熱のアスファルトに焼かれている黄金虫どもへ 朗報! 努力と勇気で、誰もがスタアになれる時代の到来だ 弱虫ども 死ぬな まだ、死ぬな よく聞け 私たちの時代、弱虫の時代が、ついにやって来たのだ 筋トレをして、腹を割れ 私たちが世界

    • but

      but 頭蓋の中で 人を、鬼にしない 頭蓋の中で 自分を、化け物にしない 鬼にしてしまった…… 化け物にしてしまった…… うつむいて咲く寒緋桜に、ありがとうなどとつぶやいたこと 2023/2/27

      • To 75

        To 75 口の中が苦い…… 私には、僥倖……? 人様に迷惑をかけるまじ あなたがたを貫く、これは背骨 揺るがない生真面目さ その揺るがなさに、途方に暮れる 彼らの顔が、見えていますか? 花ひらく前に霜に襲われたような、若い顔、顔、顔…… 伝えてください 今すぐ、彼らに、伝えてください 唯々諾々と従うな、と 誰にも、ふりまわされるな 独自の方法で、生きのびよ、と 覚えておこう、白いガードレール 疲労困憊の私を支え 冷たい鉄の感触が 歌うことを

        • オーバーオールの冒険

          オーバーオールの冒険 海洋に出て、世界を目指し 天空に羽ばたき、宇宙を目指す 遠くまで はるか遠くまで行けるよう 名付けは祈り 名は十字架 どうせ、捨てるのに、なぜ? どうせ、傷つけるのに どうせ、殺すのに、なぜ、名付けた? 暗い顔 濡れた髪 まるで、マリア・マグダレナ 常に見張られ、裁かれる 見えない礫に打たれる者 そうか そうすればいいのか…… 赤ん坊を、野に、置き みんなで寄って集って、守り、育む そうか 誰でもいいのか…… 凍

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        • 映画の詩
          12本

        記事

          百年

          百年 退勤したと思ったHOTな腕さんが戻ってきて、突然、ぼくを抱きしめて、言った 「幸せになって」 ガラガラ、ガラリ、ドンガラリ、ガラリ 昔見た、アメリカ映画 名画座の三本立ての一本目、タイトルは忘れた 病床の母親が、人生に疲れた様子の娘に 「幸せになることを怖れないで」と、言った とてもびっくりした アメリカのお母さんは、自分の子に、こんなふうに話すのか、と思った HOTな腕さんも、アメリカ式に違いない…… ぼくの中に、百人のゼツボウちゃん 真っ黒け

          断髪

          断髪 シャキン シャキン シャキンとカット! 切り髪が切り紙のように、地に落ちる いつまでも髪をつかまれ引きずられ 木偶扱いされた現場に戻される 人を呪わば、穴ふたつ 穴のふさぎ方がわからない うしろ脚で砂をかけるようにやるんだよ、と著名な評論家が言った 襟足に冴え冴えと、風 言の刃 その白鞘の霊刀、懐に まぶたを伏せるな 視線を放て 甘く、やさしく、かわいくね なぜ? シャキン シャキン シャキンとカット! ナンバーワンとかオンリーワ

          コップ

          コップ もう、いっぱいです いっぱいいっぱいです 自分のうつわ そんなに大きくなかった 認めます 認めます あっぷ あっぷ 2022/7/13

          初夏

          初夏 あなたは、わたしの心臓に、あなたを、あなたの髪で、縫いつけて わたしは、あなたの肯定を、欲しがって わたしは、あなたの否定を、欲しがった 餓鬼のように 風が吹き上がる まるで荒海 欅の葉音 冷えた弁当 ゆらゆらと、アオスジアゲハ もうすぐ、夏 2022/5/1

          写真屋さん

          写真屋さん 子どものように眠っている…… フィルムの色に 幸福な予感 きっと、幼い頃、家族といっしょに映画館で見た映画 日々の淡いにきらめく、小さな貴石のネックレス 「いらっしゃいませ」 微笑みに戸惑う 肯定されることに慣れていないのです レンズの向こう ゆっくり、絞って、きわだつ この世でたったひとりのわたしたち シャッターに祝福の音色 さぁ、食べよう あなたの隣で 幽霊のおなら 底力、という優しさ きらめきをきらめきのまま抱きしめて、ゆく

          桜 靴裏に桜花 曇天の下、今年も咲いた 桜色の花弁より、中心の赤い点が、目につく病 花見に連れていかれて、いつも困った 頭上に、無限に広がる、暗紅色の斑点 ガーゼにいっせいに滲みだした血のドット…… 瞬きせずに見つめたり、寄り目にしてみたり…… 何とか、桜色だけを見る方法 試行錯誤するうち、季節が変わる それも、目の経年劣化により、大分平気になった ふざけるように、じゃれつくように、舞う桜 人柱の上に、咲いた花 2022/3/31

          とある靴修理人の歌

          とある靴修理人の歌 俺は修理人 靴修理人 Wow wow wow ! 俺は、クドゥセ 나는 구두쇠 Yeah yeah yeah ! ポンポンで、パンパンパン! 今日も、古靴のカカトを、ハンマーでたたく 明日、仕事を辞めるのさ! お隣の国の言葉 「けちん坊」のことを、「クドゥセ」というそうな 直訳すると、「靴修理人」 靴をくり返し直して履くことから……とな! そりゃないぜ、ベイベー! ひどい、言われよう 俺はケチじゃないぜ ケチになれる程、守

          とある靴修理人の歌

          call center

          call center ポカリと大空 知らなかった 職場の上に、だだっ広い屋上 誰も教えてくれなかった 四角い部屋に、パソコンと人が整然と並ぶ 頭蓋に響く他人の声に、自分の声で答えていく 声が伝えるものたるや…… 人間そのもの 毎朝、始業時間になると、箱に、頭を差し入れる 箱の中で、ボコボコと、殴られ、蹴られ、されるまま ひたすら耐える それが、働く、ことだと思っていた 誰かに、力を抜いたほうがいい、と教えられても こぶしを握らずにはいられない

          2021.11.14

          2021.11.14 夕方の月の前を飛行機が通る よい本を買った 2021/11/14

          鴉 曇天の空を、重たげに飛んで来て、屋根の上 ガララ ガララ ガララ 耳に触る濁声 ガララ なぜ ガララ どうして ガララ こうなった…… 変われないかもしれない、という予感 は、恐怖 なまくらな自分を、見た 恥ずかしさもなく つきつけられる不可逆 ガララ ガララ ガララララ…… 声も出ない ファサリ ファサリ  黒い翼が、飛んでゆく どこにも居場所はないらしい とりあえず 歩く 2022/1/25

          雪 ガラス戸を開け、表に出る ゆっくりと雪が落ち 灰色の人々が、ほろほろと輪郭を失う あなたはひとりじゃないと歌うポップソング わたしは、ひとり 2022/1/6

          箱 つめこむな そんなこと、欲していない 2021/11/2