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真山仁『プリンス』誕生秘話

民主主義は国を豊かにし、明るい未来をもたらすのか。5月29日発売の『プリンス』は、人気シリーズ『ハゲタカ』の真山仁さん渾身の一冊。発刊経緯を担当編集者が語ります。

金融、政治、医療、外交、エネルギー問題、震災問題……。これまで発表してきた作品テーマは、多岐にわたり、つねに世の中に一石を投じる作品の刊行を続ける真山仁先生。
最新刊『プリンス』は、東南アジアの軍事政権下の国で、民主化運動に巻き込まれた二人の若者の姿を通し、「民主主義は、人を幸せにできるか」を問う長編小説です。
真山先生のノンシリーズの新作ということでは、再生医療を扱った『神域』以来1年ぶりの、満を持しての新作となります。

真山先生が、『プリンス』の執筆に向けて動き出されたのは、2014年のことでした。シンガポール、ミャンマーなどの現地取材、日本国内の有識者への取材を経て、月刊誌『Voice』での連載が始まりました。3年にわたって掲載された作品に大幅な加筆修正を行ない単行本化したのが、このたび刊行された『プリンス』です。

真山先生は、人気シリーズ「ハゲタカ」で、"お金は人を幸せにするか"というテーマを現代社会に投げかけましたが、本書では、"民主主義は人を幸せにするか”に挑まれました。
「アジアのラストフロンティア」と呼ばれる東南アジアの架空の国・メコンの利権をめぐる大国の陰謀や、虚々実々の駆け引きに、二人の若者が巻き込まれ、国際政治の残酷な現実と対峙していくという物語です。
「民主主義」というと、なんだか難しいイメージを持たれ、敬遠される方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。その心配はいりません。フレデリック・フォーサイスや、ジョン・ル・カレをはじめとする海外翻訳ミステリーに造詣が深い真山先生ならではの筆力で、今回の難しいテーマも、見事なまでに一気読み必至のエンターテインメントへと昇華されています。また加筆修正によって、連載時よりミステリー色もいっそう強まり、ページをめくる手を休ませません。

折しも世界中に蔓延した新型コロナの影響で、コロナの封じ込めには、強権的かつ独裁的な政権が成果を挙げ、世界で勢いを増しています。こうした「危機」にあたっては、民主主義的な政治手法はマッチしないのではないかという声も聞こえ、「民主主義の功罪」に注目が集まっているいまこそ必読のエンターテインメント作品を、楽しんでいただけましたら幸いです。

第三制作部文藝課 兼田将成

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