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<第11回>「統計学」と「確率論」こそ、ビジネスパーソンの必須教養!?

『はじめての統計学 レジの行列が早く進むのは、どっち!?』 
サトウマイ著(総合法令出版)

❶イントロダクション~「はじめてof the Year 2021」の最有力候補です

世界共通言語は英語ではなく数字

本書は今年2月に発売された統計学の入門書的ビジネス読み物です。「ジャンケン」や「宝くじ」など、日常生活に溢れる数多の「確率・統計」の事例が語られており、とてもイメージしやすいと思います。

著者のサトウマイ氏は現在、企業のマーケティング・リサーチや需要予測調査、商品開発支援などを行なっているデータ分析・活用コンサルタント。学生時代、数学アレルギーもあって文系の道に進んだものの、統計学と出合ってアレルギーを克服。大学在学中、㈱野村総合研究所主催の「マーケティング分析コンテスト」にも入賞しています。

今回も本書の「はじめに」から、気になった文章を抜粋してみました。
◎ローパフォーマーな社員は、ハイパフォーマーな社員が当たり前にやっている「言語化」をしていない
◎仕事の目的やゴールを設定できて、そこまでの地図を描ける人が、目的を達成しやすい
◎確率・統計は「数字を使ったリアル謎解き」
◎確率・統計は「自分は一体、何がしたいのか」「それはどうやったら達成可能か?」を組み立てられること
◎世界共通言語は英語ではなく数字

今回は本書の「おわりに」からも、気になった文章を抜粋してみました。
◎十進法は人間の指が10本あることから開発された
◎5000円安くなることは同じなのに、1万円の洋服はカゴに入れ、200万円の車は嬉しくない。大きな金額になるほど、身体感覚を超えて、正しく認識できない
◎小さな損を繰り返していくと、やがて大きな後悔になる
◎空き巣の対策をするためには、空き巣の手口を知っておく必要があるように、数字に騙されないようにするためには、騙し方を知っておいたほうがいい

じつにグッとくる数ページです。内容も期待が高まりませんか?
本連載では毎回、「はじめに」から気になる文章を抜粋してきましたが、もし「はじめにof the Year」なる賞があれば、本書は今年度の最有力候補です。
では早速、内容を紹介していきますよ!!

❷独断と偏見のお勧めポイント:第4章「早く進むレジ行列の見つけ方」

ビジネスパーソンは「待ち行列理論」をいかに使うべきか

書名にも使われているエピソードですが、今回は第4章の「待ち行列理論」を採り上げてみます。
本書には、数式で求められる「レジ稼働率」や「平均レジ通過時間」も書かれていますが、重要なことはそこではありません。

さて、あなたなら、どの基準をもとにレジの行列に並びますか?
①並んでいる人数が少ない行列
②待っている人のカゴの中身が少ない行列
③手際のよいレジ係のいる行列

多くの人が、①並んでいる人数が少ない行列を選ばれたのではないでしょうか。しかし、この選び方はお勧めできません。レジでいちばん大切なことは、「どれだけそのレジがスムーズに流れているか」なのです。いわゆる「回転率」といわれるものですね。
この課題を見つけるのが、「統計学」なのです。

本書には、"統計学は、未来予測と原因追及に活用される学問"と書かれているとおり、これを行うことで、「課題を見つけることができる」というわけです。

詳細は本書に譲りますが、「標準偏差」「リスク」「リターン」の考え方・検討や分析などは、多くのビジネスパーソンが直面する内容ばかりです。
本書の内容から想像するに、「この施策は、投資する価値があるのか?」とか、「実際のPR施策は、効果があったのか、なかったのか?」といった課題の分析に、人や時間をかけることを優先しない企業がまだまだ多くあるようです。著者は、「分析をしたことで課題は解決する」「AIの導入や自動化の推進ですべてうまくいく」などと、大企業でさえ平然とトピックスとして挙げている昨今の風潮に、危機感を抱いているのです。

❸深掘りの勧め:マーケティングでも使える「プロスペクト理論」

これさえできれば、仕事も人生もイージーモード!?

本書の第9章では、行動経済学の基礎といわれている「プロスペクト理論」が採り上げられています。
経済学の数学モデルに心理学的な行動モデルを組み込んだ「行動経済学」については、より詳しい本がたくさん出ていますので、ここでは「つまり、どういうことなの?」ということだけを、簡単に説明しておきましょう。

「プロスペクト理論」は、"予想される利害額や確率などの条件によって、人間がどのように意思決定を行なうのか"ということをモデル化したものです。 期待効用仮説に対して、心理学に基づく現実的な理論として、1979年に行動経済学者のダニエル・カーネマン(1934年~)と認知心理学者のエイモス・トベルスキー(1937~96年)によって展開されました。
「人は得をすることよりも損をしないことを優先する」「金額の大きさと主観的に感じる価値は一致しない。金額が2倍になると、主観的に感じる価値は1.6倍くらいになる」など、マーケティングやPRでよくいわれていることにも触れられていますが、深掘りしてみると面白いですよ!
この理論を修得すれば、仕事のみならず、人生もきっとうまくいくに違いありません。
※私は、「ここで出てくるのか!!」と驚いた一人です。勉強不足ですね。(笑)


◆今回の名言◆

「自分で薪を割れ、二重に温まる」
ヘンリー・フォード(1863~1947年/アメリカの企業家)

この考え方を忘れてはならないのですが、なかなか実践できませんね。


★おまけ★最近読んでいる本

『世界「倒産」図鑑 波乱万丈25社でわかる失敗の理由』荒木博行著(日経BP)

リーマン・ブラザーズ、エンロン、コダック、トイザラス、MGローバー、山一證券、そごう、タカタ……日米欧の25事例を徹底分析! ほんとうにいろんなビジネスモデルがあると思う半面、十人十色の経営者の人間ドラマも面白いです。シアーズの通信販売撤退の翌年にアマゾンが新たな通信販売モデルを立ち上げるなど、ビジネスの移り変わりも面白かったです。お勧めです。