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<第19回>文章をロジカルに考えて書くコツ

『入門 考える技術・書く技術』
山﨑康司著(ダイヤモンド社)

❶イントロダクション~日本語はロジカル表現に不向き

本書は、2011年に発刊されたロジカルシンキングとライティングの入門書です。1995年の発売から売れ続けている、バーバラ・ミント氏の定番書 『考える技術・書く技術』(ダイヤモンド社)の副読本として、よく紹介されています。

じつは、本書の著者である山﨑康司氏は、『考える技術・書く技術』の訳者でもあります。その点において、本書は『考える技術・書く技術』を“日本人向けにアレンジした一冊”ともいえるでしょう。『考える技術・書く技術』を読み、「自分にはむずかしい……」と感じた方でも、スラスラと読めて、頭にスッと入ってくるはずです。

今回は本書の「まえがき」から、気になった部分を抜粋してみます。

”ピラミッド原則は、世界中の一流経営コンサルティング会社においてレポート・ライティングの基本コンセプトとして広く採用されている手法”
“ピラミッド原則はグローバルに通用するものだが、いざ実践しようとすると、日本語特有の問題が足を引っ張る”
“日本語のおよそ8割の文章には主語がない、主語への意識が薄い”
“日本語では接続詞を気安く使えてしまう”
“ピラミッド原則の基本は、考えを1つの文章で表現すること”

『考える技術・書く技術』の著者であるバーバラ・ミント氏は、マッキンゼーをはじめとする世界の主要コンサルティング会社で、ライティングを教えていました。彼女はこのほかにも、ペプシコ、オリベッティ、AT&Tシステム、ユニリーバなどの有名企業で指導しています。

彼女が指導に用いた言語は、もちろん”英語”です。そのため、彼女の教えのすべてを、そのままのかたちで“日本語”に適用するのは、むずかしいと言わざるをえません。

その点を踏まえたからか、本書では、日本人が苦手なロジカル表現の書き方や考え方について、訳者ならではの観点と具体的な事例を踏まえた説明がなされます。とくに、メール本文の書き方は、即実践可能なものばかりです。

では早速、読み解いていきましょう!!

❷独断と偏見のお勧めポイント:ライティングの誤解に気づく

「読むのは誰か」を認識して書く

本書は、“ライティング”=「読みやすく、伝わりやすい書き方」について書かれています。日本語でのライティング学習というと、作文などをイメージされる方もいるでしょう。

しかし、日本でライティングを学ぶ機会について、“実際にはほとんどない”と著者は指摘します。
たとえば、あなたはレポートを書くときに、次のような考え方で書いていないでしょうか?

・書きたいことを書く
・起承転結で書く

「書きたいことを書く」は、書くテーマが見つからないときのアドバイスとしてよく使われます。国語の先生からそのように教わった方もいるのではないでしょうか。また、「起承転結で書く」は、“文章を上手に書くための方法”として認識されている方が多いかもしれません。

しかし、これらはレポートのライティングとは、まったく関係がありません。

「これの何がいけないの?」
「そもそも、そんなふうに書いてないよ」

と思った方も多いと思いますが、じつは、すでに影響を受けています。国語教育や日本語特有の構造が、文章をロジカルに書く際の足かせになってしまっている人は、とても多いのです。

また、レポートに限った話ではありませんが、「読み手の立場を考えて書く」ことを意識できている人がどれくらいいるでしょうか? 「読み手の関心に向けて書く」ことはいかがですか? 恥ずかしながら、私はほとんど意識をしていない気がします。

本書では、上記のような、ロジカルでないレポートの修正例などを具体的に挙げながら、「どうすれば、書き手の“伝えたいこと”が伝わるか」を解説します。修正例の一部を紹介しましょう。

・結論を冒頭に明快に表現する
・結論を導く根拠をその下に箇条書きにする
・全体としてメッセージ構成がひと目でわかるようにする

私は、文書を書く前に考えを組み立てる「考えるプロセス」の必要性に、目からウロコが落ちました。

「考えるプロセス」で構成を決めて、「書くプロセス」でレポートを書いてみると、それだけで、いままでよりも格段に伝わりやすく、わかりやすくなると思います。

❸深掘りの勧め:メールが劇的にわかりやすくなる!

合言葉は「感謝の言葉にPDF」

最後に、すぐに使えるテクニックとして、本書の終章で採り上げている、メールが劇的にわかりやすくなるポイントをご紹介します。
まず、メールの基本的な注意点をおさらいしましょう。

  • 何を言いたいのか即座にわかるよう、主メッセージは明快に、メール本文の冒頭に

  • 全体の分量、段落、文章も短くコンパクトに

  • ロジック展開がわかりやすい箇条書き的な表現がよい

  • 次のアクションを具体的に表現する(次に、読み手は何をするのか、書き手は何をするのか)

まとめると、いつも以上に「簡潔に、わかりやすく」を心がける、ということかと思います。とはいえ、「そんなこと言ったって、すぐにはできないよ」という方もいるでしょう。

そんな方にお勧めの秘策が「感謝の言葉にPDF」です。

これはメールを書く際に、感謝の言葉を述べてから以下の三つのポイントを書くという実践です。

  • P (Purpose Statement)……主メッセージ

  • D (Detail)……詳細、箇条書きでよい

  • F (Follow-Through)……次のアクションについて

では、具体的にメールを見てみましょう。
まずは、こちらのメール本文を読んでみてください。

おつかれさまです。

調査したところ、お客様へのメール送信はできているようなのですが、メール承認が未完了状態のようです。
メール承認が未完了ということは、まだ弊社からのメールを確認した実績がないということなので、
迷惑メールフォルダに入ってしまい見落とされているのかもしれません。
マニュアルをご確認いただき、返答例をみながらの対応をお願いします。

ちょっとまわりくどいですよね。
では、こちらはどうでしょう?

おつかれさまです。
教えていただき、ありがとうございます。

問い合わせ内容の原因ですが、
迷惑メールに振り分けられてしまっている可能性が高いと思います。

以下、調査内容です。
・お客様へのメール送信自体は完了していました。
・お客様のメール認証フローは未完了状態です。

マニュアルに具体的な返答例があるので、
参照しつつ対応をお願いします。

「感謝の言葉にPDF」をきちんと応用することで、見違えてわかりやすくなりましたね!

大切なことは、日常的に練習をすること。毎日のメールでも、ライティングは劇的に向上するそうですよ! このほかのテクニックが気になる方は、ぜひ『入門 考える技術・書く技術』を読んでみてくださいね。

◆今回の名言◆

「未来を考えない者に未来はない」
ヘンリー・フォード(1863年~1947年/実業家・フォード・モーターの創設者)

夢や目標を実現するための方法を考えていますか? 具体的な日々の活動につなげないと、夢は実現しない、ということを忘れてはいけませんね。

★おまけ★最近読んでいる本

 『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』 
大西康之著(東洋経済新報社)

本書はリクルート創業者、故・江副浩正氏の評伝です。「ジェフ・ベゾスは、このヤバい日本人の『部下』だった」の文句にやられました。ほんとうに、「おもしろすぎて、一気読み」です。「じつは、Googleは日本で誕生していたかも?」と思ってしまいました。お勧めです。
“江副さんが生きていたら、保身に汲々とする日本の経営者にこう尋ねることでしょう。「経営者とはどういうものか、経営者ならなにをすべきか。わたしはつねに学び、考え、そのとおりにやってきました。あなたがた、自分が経営者であると考えたことがおありですか」”
――瀧本哲史(京都大学客員准教授・エンジェル投資家/2019年没)【「はじめに」より】