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編集の現場から

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本ができあがるまでにはドラマがあります。一冊一冊に込められた編集者の熱い想いとともに、制作現場からのレポートをお届けいたします。
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#本

『模倣と創造』誕生秘話

佐宗邦威先生の最新刊、『模倣と創造』が好評発売中です。その発刊経緯を、担当編集者が語ります。 「いま僕は方法論ではなく、もっと本質的なところを伝えたいんです」 本書『模倣と創造』の企画を提案した際に、著者の佐宗さんはそうおっしゃいました。創造性は「デザイン思考」などのノウハウや方法論を学ばなければ育たないものではないし(方法論だけ学んで満足してもいけない)、そもそも幼少期には誰もがもっていたものなのに……という、ジレンマのようなものがあるとのこと。正直なところ、わかったよう

『人類が進化する未来』誕生秘話

遺伝子の操作で親が望む外見・能力を持った「デザイナーベビー」をつくる、細胞の老化を抑えて「不老不死」を実現する……こうした科学の発展がもたらす「人類の新たな進化」について、8名の科学的権威にインタビューした一本書『人類が進化する未来』です。 ピンポイントでゲノム情報を改変する「クリスパー・キャス9」でノーベル化学賞を受賞したジェニファー・ダウドナ氏や、「人生200年時代」の到来を謳うデビッド・A・シンクレア氏など、ひと昔前ならSFの世界だったような事象が、いま現実の世界で実

『5000日後の世界』誕生秘話

世界的に著名な雑誌『WIRED』の創刊編集長であるケヴィン・ケリーさんは、しばしばテック界の「ビジョナリー」(=予見者、先見の明のある人)と称されます。本書に推薦を寄せてくださった落合陽一さんをはじめ、多くの方がケヴィンさんのファンを公言されています。インターネット黎明期からシリコンバレーのスタートアップを数多く取材し、スティーブ・ジョブズやビルゲイツにもインタビューしてきた伝説の編集者です。 そう聞くと、刃物のように鋭い人物を想像しがちですが、ケヴィンさんの素顔はとても気

真山仁『プリンス』誕生秘話

民主主義は国を豊かにし、明るい未来をもたらすのか。5月29日発売の『プリンス』は、人気シリーズ『ハゲタカ』の真山仁さん渾身の一冊。発刊経緯を担当編集者が語ります。 金融、政治、医療、外交、エネルギー問題、震災問題……。これまで発表してきた作品テーマは、多岐にわたり、つねに世の中に一石を投じる作品の刊行を続ける真山仁先生。 最新刊『プリンス』は、東南アジアの軍事政権下の国で、民主化運動に巻き込まれた二人の若者の姿を通し、「民主主義は、人を幸せにできるか」を問う長編小説です。

『「鬼滅の刃」で学ぶ はじめての仏教』誕生秘話

5月22日発売の『「鬼滅の刃」で学ぶ はじめての仏教』は、 仏教界のインフルエンサーが、人気マンガを題材に、仏教のエッセンスを紹介。発刊経緯を担当編集者が語ります。  慌ただしく会社へ行く用意をしていた、ある日の朝――。  NHKのニュースで"お寺の掲示板をバズらせている和尚"として北九州市・永明寺の松﨑住職が紹介されている映像に目が止まりました。 「衆生は不安よな。阿弥陀、動きます」(松本人志氏のツイート「後輩芸人達は不安よな。松本 動きます」をアレンジ) 「ぴえんもご縁

『戦争というもの』誕生秘話

5月13日発売の『戦争というもの』は、故・半藤一利氏の最期の原稿。生前、本書に賭ける著者の思いには、格別なものがあったとか。発刊の経緯を担当編集者が語ります。  本書の企画が動き出したのは、2020年春、コロナ禍における一度目の緊急事態宣言が発令される少し前のことです。その頃、著者の半藤一利は、病院のベッドの上にいました。  半藤は、私の実の祖父にあたります。祖父は、2019年の夏に脚の骨を折りました。酒に酔って、ころんで、翌日救急車で運ばれてそのまま入院。手術を受け、リハ

『不安な時代に踏み出すための「だったらこうしてみたら?」』誕生秘話

5月22日発売の新刊、『不安な時代に踏み出すための「だったらこうしてみたら?」』。本書が誕生した経緯を、著者の熱い想いを交えながら担当編集者に語ってもらいました。 若い世代に読んでもらえる本をつくりたい  前作『「どうせ無理」と思っている君へ』が、12刷5万部を超えるロングヒットとなった植松努さんは、北海道赤平市の㈱植松電機で、本業のバッテリー式マグネット開発のほかに、ロケット開発、宇宙開発に取り組み、池井戸潤さんの原作でドラマ化もされた『下町ロケット』のモデルとも言われて

PHP文庫『「鬼滅の刃」で哲学する』 誕生秘話

2021年3月に発売されたPHP文庫『「鬼滅の刃」で哲学する』。映画化もされて昨年来話題の『鬼滅の刃』を、哲学的に考察した本です。担当編集者が発刊の経緯を語ります。 「『鬼滅の刃』は、哲学に満ち溢れています。ぜひやりましょう!」  著者の小川先生から、興奮気味に返事がきたのは、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が公開から10日ほどを迎えたときでした。  当時私は、すでにロングセラーとなっていた『ジブリアニメで哲学する』(PHP文庫)のシリーズ展開を模索していたタイミング