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PHP文庫『「鬼滅の刃」で哲学する』 誕生秘話

2021年3月に発売されたPHP文庫『「鬼滅の刃」で哲学する』。映画化もされて昨年来話題の『鬼滅の刃』を、哲学的に考察した本です。担当編集者が発刊の経緯を語ります。

「『鬼滅の刃』は、哲学に満ち溢れています。ぜひやりましょう!」
 著者の小川先生から、興奮気味に返事がきたのは、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が公開から10日ほどを迎えたときでした。
 当時私は、すでにロングセラーとなっていた『ジブリアニメで哲学する』(PHP文庫)のシリーズ展開を模索していたタイミングだったこともあり、迷わずこの企画を先生に打診したところ、上記のメールが瞬時に返ってきたのです。
 その日は、「日本で上映された映画史上、最速で興行収入100億円突破!」というニュースが盛り上がっており、これはすごいことになりそうだと思ったことを記憶しています。
 幸いすぐに企画は通り、小川先生は、超過密スケジュールの合間を縫って、約2カ月という短期間で(まさに全集中の呼吸を駆使して)原稿を仕上げてくださいました。唯一の心配は、「果たして発刊予定の4月までブームが持つのか⁉」ということでしたが、それはまったくの杞憂でした。一過性のブームでは終わらない、コンテンツの強さを感じます。
 制作中に驚いたのは、小川先生の「鬼滅愛」のすごさです。たとえば、本書の校正中のことです。「このセリフはどこに出てきたかな?」とコミックを確認してもなかなか見当たりません。「もしかすると、先生の勘違いでは?」と思って連絡をすると、「〇巻・第〇話の真ん中あたりです」という正確な返事がすぐさま返ってくるのです。ほとんど内容を丸暗記しているのでは⁉ と思うほどでした……。
 さて、本書の内容は、『ジブリアニメで哲学する』と同様のスタイルで、「刀」「鬼」「呼吸」「藤の花」「カラス」など、作品に登場する主要なモチーフを題材に、それぞれを哲学していくものです。モチーフは50に厳選し、気になった項目から好きに読んでいただけます。「たんなる謎解き本にはしたくない」という、哲学者としての著者のこだわりが詰まった一冊になったかと思います。
 ぜひ、5万部を突破した好評既刊『ジブリアニメで哲学する』と一緒に読んでいただけますと幸いです。
 最後に、カバーのデザインでは、多くの書店員さんからラフ段階よりたくさんのご意見をいただきました。おかげさまで、このような装丁となりました。この場を借りて御礼申しあげます。 
                      PHP文庫編集部 中村悠志

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