田舎暮らしの風景『とある農家のある春の日』
私の田舎では、1年に2度お米が穫れる。
子供の頃から当たり前にあった二期作という光景が、他の地域で育った人にとっては当たり前じゃないということを、つい最近知りました。
冬の間にたっぷりと空気を取り込んだ田んぼを耕し、桜の蕾がやっと膨らみ始めた頃には苗作りが始まります。
小さな籾の一粒から出た細くか弱い芽が、早春の寒さに負けないようにしっかりと温めながら、少しずつ成長していく姿を見守ります。
毎日、毎日、水を切らさないように、温度を上げ過ぎないように、まるで赤ちゃんをあやすように、苗たちの様子を伺います。
そして、しっかり育った苗たちは、桜の開花を待たずに独り立ちします。
そう、田植えの始まりです。
まだ降霜の不安が残る中、暖かいビニールハウスを出て、急に冷たい環境に置かれる苗たち。送り出す私たちも内心不安がいっぱいです。
田んぼに植え付けられた苗たちは、ある日は強風に吹かれ、ある日は豪雨に打たれ、またある日は鳥たちに踏まれ、まるで、社会の荒波に揉まれる新入社員たちのように、たくさんの試練に立ち向かいます。
そうして、強く根を張り、ぐんぐん背丈を伸ばし、梅雨が明ける頃には収穫の時期を迎えます。
昔から、米作り(稲作)には八十八の手間が掛かると言われていますが、機械化が進んだ現代でも、数え切れないほどたくさんの手間が掛かり、細かな手仕事もたくさんあります。
それでも、農家の人たちは、手塩にかけてお米を作っています。
お米を食べてくれる、たくさんの人たちの笑顔を思いながら、毎日頑張っています。
先日、ついに桜前線が北海道に到達したと聴きましたが、もうすっかり季節は初夏。我が家では、早場米の田植えを終え、秋収穫に向けて苗作りが再び始まります。
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