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自分の人生と子供に願う人生のギャップ(男旅 vol.5 直島)

2021年の夏休み、関西帰省からの直島男旅の続きです。

このnoteを読んでくださっているあなたは、ご自身の進路をいつ決めましたか?幼稚園は無邪気に「プロ野球選手」とか「お花屋さん」って言ってたちびっ子が、いつの間にか「プログラマー」とか「看護師」といった肩書を背負って人生を過ごしていますよね。

僕が進路を意識したのは小学生だったので、比較的早いほうでした。小学4年のころ、父親が仕事で使うという理由でパソコンを買って自宅に置いてくれたんですね。今のパソコンと違い1980〜90年代のパソコンは高級品でした。NECの国民機 PC9801 Vm2、たぶん40万円くらいしたはずです。買ってしばらくは、父親が一太郎というワープロソフトで仕事の書類を作っていましたが、しばらくすると飽きたのか全然使わなくなっていました。その結果、高価なパソコンは僕のゲーム専用機になってしまいました。ペラペラのフロッピーディスクを入れて、ガチャガチャ音を立ててデータを読み込むと、単純なドット絵の画面が写ります。音楽もビープ音だけの貧弱なものでしたが、小学生を熱中させるには十分でした。

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そのうち、付属の分厚いマニュアルをペラペラ眺めたり、ベーマガという雑誌に掲載されたゲームのプログラムを入力してみたり、パソコン筐体のカバーを開けて中の部品をのぞいたりするようになりました。するとパソコンの中には、緑の板の上に細かい配線や黒いチップがひしめくように集まっている電子回路があります。

「かっこいいなぁ」

小学生の僕は素直に感じました。それ以来、エレクトロニクスに興味を持ち、理系科目が得意だったこともあって、大学は工学部電子工学科、そのままカメラメーカーで回路設計の仕事をするに至ります。というわけで、子供の頃の「かっこいい」とか「すてきだな」って憧れは人生を決める要因になるので、すごく大切ですね。

さて、高1の長男は建築家を志望しています。建築家を死亡することになった経緯はまた別のnoteでお話しますが、建築家になるには工学部の建築学科を卒業するのが一般的です。ところが長男は数学と物理が壊滅的に苦手…。定期テストの対策に数学と物理の勉強方法を僕がサポートしたり、わからない箇所を教えたりしたんですけど赤点ギリギリの成績でした。高2から文系・理系にクラスが分かれるので、夏休みが明けると進路希望調査があります。進路選択の期限が迫り「どうする、どうする!?」の状況でした。

そこで今回の帰省の道中、息子と車内でゆっくり話す時間があったので話を聞いてみたんですね。

僕「文系と理系の選択どうするの?」

長男「数学ムリ、物理もムリ」

僕「そんなん言っても、建築家になりたいんだったら理系行かないと…」

長男「いや、本当にムリだから…」

そのとき、僕はピーンときました。長男が建築志望とわかってから、本屋で建築関係の本を何冊か買って息子に渡しました。その中に大学の学部について説明する本があって、建築家になるには工学部だけじゃなく「美大の建築」という選択肢もある、と書いてあったんですね。ただ、そういうのを選択するのは、小さい頃から絵が好きで美術部に所属するような特別な人だろうと読み飛ばしていました。

僕「そういえば、美大の建築っていう方法もあるらしいよ」

息子「マジ!それがいい!そうする」

僕「えっ!?本気で?」

息子「やった、これで理系に行かなくていい!」

長男の予想外の好リアクションに驚きました。

僕は工学部を出て大手企業に勤めたにも関わらず「人生をおもしろおかしく生きたい」と独立しました。いわゆる普通でない人生に心地よさを感じています。ところが不思議なもので、息子に対しては理系の工学部に進学して大手の会社に入り、安定を手にして苦労しない人生を願っていたことに気づきました。自分が望む人生と子供に願う人生はこんなに違うのか!?とギャップに驚きました。

美大という選択肢をひらめいたのにはもう一つ理由がありました。「ブルーピリオド」という美大受験をテーマにした漫画を買って、家族でシェアしていたんですね。漫画の主人公は高2で絵に目覚めて、日本最難関の東京芸大を目指すストーリーです。まさかまさかの、リアルブルーピリオドが我が家にやってくるとは!!

とはいえ、僕の人生に1ミリも接点がなかった美大受験です。工学部なら僕も勉強方法や進路選択もある程度わかるし、なにより偏差値で大学を選べる安心感があります。しかし、美大受験は芸術に人生を捧げた世捨て人の世界だと思っていた手前(大変失礼)、未知の世界に不安がつのります。苦手な数学と物理のプレッシャーから開放されて、晴れやかな表情の息子と対象的に、息子の将来が不安で仕方ない父親でした。

美大受験ってどうやるんだ?

そもそも、美大の建築を出て飯を食っていけるのか?

この日の夜、facebookで次のような投稿をしました。

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さて、この投稿に対して反応はあったのか?息子の進路はどうなるのか?その経緯はこれから記していこうと思います。

今回の旅で撮った、僕の「いい写真」、長男と四男を直島のフォトスポット「黄色カボチャ」で撮った写真です。

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僕にとって「いい写真」とは、人生のかけがえない瞬間を残した写真です。

この黄色カボチャは直島のシンボルとしてとても有名なインスタレーションです。ところが、この写真を撮った2週間後に台風で流されてしまったんです。
普段見慣れているものは、いつまでもそこに居続けると錯覚してしまいます。しかし必ず別れは訪れます。いまはいつも一緒にいる家族も、あと3年すれば長男が家を出て、一人一人といなくなっていきます。いま一緒に生活できる幸せをもっと味わい尽くしたいですね。

あなたにとって「いい写真」とは何ですか?

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