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71杯のチャイから見るインド #印度乳業

インド滞在で飲んだチャイを数えてみたら71杯だった。チャイを通してみたインド旅の景色を少しお裾わけしてみようと思う。

インドでは暮らしと共にある「チャイ」という庶民の飲み物。チャイのあるところに人が集い、心緩む瞬間にはいつもチャイがある。

チャイというのは本来は単に「茶」のことを指す言葉だが、日本ではインド式のスパイスの入った煮出しミルクティーのことを連想するだろう。ちなみにインドではスパイスの入ったチャイはあまり一般的ではなく、入っていても生姜とカルダモンくらい。あえて「マサラチャイをくれ」と注文すれば出してくれることもある。

これほど広く普及しているのに意外とインドにおける歴史は浅い。経緯は『インドカレー伝』などでも紹介されているが、イギリスがインド国内での紅茶の消費を促すために「正しい」飲み方を紹介するキャンペーンを行った結果、牛乳とスパイスを入れて煮出すインド式の飲み方が普及してしまったのだという。インドではなんでもインド化してしまう。

東京・京都で「印度乳業」を始めた

今回のインド旅は京都でチャイ屋台営業をするためのリサーチの意味合いもあったので、飲んだチャイは全て記録するようにしていたのだった。牛乳のおいしさを活かして作る美味しいチャイをぜひ飲んでみてください。

まさら屋台の営業許可が取れた


チャイで振り返るインド旅


忘備録としてここにツイートした画像と背景を順番に辿って今回の旅をチャイを起点に思い出しながら、チャイを通して見た風景を記述してみたいと思う。


1杯目 コルカタ空港の外、到着の一杯

チャイを飲んでいるだけの画像だが、今回は入国するのに結構苦労した。荷物をロストしそうになりながらダッカからコルカタ行きの飛行機に乗り、e-visaの関係でコルカタの入国審査で長いこと止められ、やっと辿り着いた空港のビリヤニ屋でありついたチャイ。生姜が効いていて甘ったるい感じのチャイだった。20Rs.

インドには呼ばれた人しか入れないなどというが、それで言ったら今回の入国の苦労は「呼んでみたけどこいつを入れるかどうかギリギリまで迷った」とかそんな感じだろうか。

2杯目 タンドールサフランチャイ

コルカタの街にたどり着いてすぐにビリヤニを食べて、店の前に出ていた屋台でタンドールサフランチャイを飲んだ。タンドールでアツアツに熱した素焼き容器にチャイを注ぎ香ばしい風味をつけて、仕上げにサフランをかける。サフランはあまり香らないし熱するのはただのパフォーマンスだ。とにかく容器が熱くて飲みづらい。値段はかなり強気の35Rs.

インドではこうやって無意味に加熱させてぶくぶくさせたり、髪の毛を燃やしたり、パーン(噛みタバコ)を燃やしたりと、何かとファイヤーでパフォーマンスをするのが好きみたいだ。

煮詰まっている分ちょっと濃厚さはあるが、タンドールに突っ込んだ容器を使っても味に寄与してはいないと思う。ただ、コルカタで使われている素焼きカップによる雰囲気や土の香りが大いに気分を高揚するのは確かだ。

3杯目 ムスリム食堂のチャイ

夜中にコルカタに到着しソッコーでビリヤニを食べて、次の日の朝は5時ごろアザーン(ムスリムのお祈りの声)で起こされた。パキスタンに行った時もこういう経験があったなと思い出しながら二度寝し、朝食を食べに出た。

ムスリム食堂で朝からニハリとロティを食べられてご満悦だったが、店員の髭の長いお兄さんがデザートにフィルニを薦めてくれた。フィルニはライスプディングで、素焼きのカップに入っていた。本当はシャヒトゥクラというデザートを食べたかったのだがかなりデカかったのでやめた。

チャイを飲んだら甘くなかったのでフィルニに合わせて砂糖を抜いてくれたと思ったら底に沈んでるだけだった。

ムスリム食堂は男たちの空間だ。店のピークタイムがすぎ店員はみなチャイを飲みながら談笑している。途中で鶏を両手に10羽抱えた男が来て、店の奥に入っていった。〆てカレーにするのだろうか。

チャイは宗教を超えている。ムスリムもヒンドゥーも等しくチャイを飲んでいる。値段不明。

4杯目 アーンドラおじさんの神経質なチャイ

朝食の帰りに通りがかった南インド料理店で、神経質そうなアーンドラ出身のおじさんのチャイを飲む。愛想が悪い。

甘すぎず紅茶の味が一本芯が入ったようなチャイ。好きな味だった。
生姜も何も入れてないけどしっかりチャイとして成立している。35ルピーはかなり高いが、自信の裏返しだろうか。

チャイをダラダラ煮続けたりせず、注文が入ってから鍋を温めて、提供前に味見する人は後にも先にも初めてだった。

5杯目 学生に人気のカルダモンチャイ

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