見出し画像

納豆、豚の燻製、発酵筍、どぶろく...。日本の原風景を想起させるナガランド料理とは【東京マサラ部活動レポート】

ナガランド州はインド北東部に位置し、中国、ミャンマー、ブータンなどに接している。インド連邦の一部ではあるものの歴史的にも民族的にも、いわゆるマジョリティのインドではない。

料理に関しても、一応「カレー」と言われているがスパイスはほとんど使われていない。地理的にも高地の密林がほとんどのため、燻製や発酵を使用した保存食が多い。どちらかといえば東南アジアの民族料理と共通する特徴を持ち、宗教的にも食物の禁忌がないため虫から豚肉、犬肉まで幅広い食物が食べられている。

発酵たけのこや干し魚など強烈な匂いのする料理もあるが、肉の登場頻度も高いため日本人にも馴染みやすい味のものが多いかもしれない。

ということで、1月はナガランド料理研究をしていたのでまとめてみます。

どうも、カレーシェアハウス【東京マサラ部室】を拠点に活動し、インド亜大陸料理の情報を発信し続け日本にインドを作り上げることを企む秘密結社、東京マサラ部です。怪しいものではありません。

Twitter→https://twitter.com/masala_bu
Instagram→https://www.instagram.com/masala_bu/

東京マサラ部では活動において毎月のテーマを決めながらインド亜大陸料理を作り、動かない旅を続けています。旅の模様はこちらのマガジンにまとめています。

東京マサラ部室の移動履歴

2020年
11月 ネパール料理
12月 バングラデシュ料理

2021年
1月 パキスタン料理
2月 マハラシュトラ料理
3月 ゴア料理
4月 カルナータカ料理
5月 ケーララ料理
6月 タミル料理
7月 スリランカ料理
8月 ビリヤニ
9月 アーンドラプラデシュ
10月 フリーテーマ
11月 オディシャ
12月 西ベンガル

2022年
1月 ナガランド
2月 カシミール(予定)
3月 ラジャスタン(予定)
4月     北インド家庭料理(予定)
5月  グジャラート(予定)

毎月テーマを決め、住民が中心となりつつオンラインでゼミメンバーを集めLINEグループを作って情報交換を行っています。

興味のある方を巻き込んでリサーチをし、有識者にヒアリングをしつつレシピを共有しながら実際に料理を作ってみるというのが主な活動です(興味ある方はTwitterまでDMください)。

今月は「ナガ料理」がテーマとなり、約20名の方が参加してくださっています。ゼミと言っても独学するためのモチベーションアップや情報交換が主な目的です。こうしてともに旅してくれる仲間の存在はありがたいですね。

実際にオンラインミーティングで使用したスライドを、部分的に補足しながら解説を残しておきます。興味がある方はいつでも仲間に入れますので東京マサラ部室のTwitterまでDMでご連絡ください。


ナガ料理の概観

ナガランド州ってどこ?

  • 北東インドに位置する。山岳地帯で、伝統的なナガ族の土地はミャンマーとインドにまたがる。いわゆるインドよりもミャンマーや中国、ブータンなどに近い食文化。

民族

  • 代表的な民族が16存在し、村によって食文化が違う。各民族によって言語が違い、共通言語として英語が使われている。出回っているレシピの中心はアンガミ・ナガによるものが多い。

    • 代表的な民族

      • ANGAMIアンガミ族

      • AOアオ族

      • CHAKESANGチェケサン族

      • CHANGチャン族

      • GAROガロ族

      • KHIAMNIUNGANキャムナン

      • KONYAKコニャック族

      • LOTHAロタ族

      • PHOMポム族

      • POCHURYプチュリ族

      • KACHARIカチャリ族

      • RENGMAレングマ族

      • SANGTAMサンタム族

      • SUMI スミ族

      • YIMCHUNGERユムキャン族(ユムチュンガ)

      • KUKI クキ族

      • ZELIANGゼリアン族

食文化

  • キリスト教徒が多いが伝統的にはアニミズム。 食のタブーは少なく、ノンベジの料理が多い。

  • 主に食べられている食材は米、豚、鶏、犬、昆虫、たけのこ(生、干し、発酵)、anishi(里芋の葉を乾燥させたもの)、里芋、axoneまたはakhuni(納豆)、マスタードの葉、干し魚(ナコン)など。

家庭調理の一例。ゆで野菜、唐辛子のチャトニ、豚肉または鶏肉または魚、ダルというのが一般的な構成。
  • 犬や昆虫などは価格が高いのであまり食べられないらしい。犬は1匹500~600Rs程度で市場で売られていて、人間を恐れている。ペットとして犬を飼うこともある。

  • 保存の観点から肉は囲炉裏で燻製にすることが多い。

  • 豚のラードも料理に使う。

  • ナガランド特産の唐辛子としてキングチリ(ブートジョロキア)があり、トマトと一緒にチャトニーにしてほぼ毎食のようによく食べられている。

  • スパイスの使用は少ない。にんにくや唐辛子が中心で、玉ねぎもあまり使わず、煮込むだけの料理が多い。

  • ナガ料理を出すレストランは少なく、家庭料理が中心となるが、デリーなどにはレストランもある。

  • 発酵した干し魚をダシのように使ったりする。

  • 禁酒地域だが米から作ったどぶろく的なお酒も飲まれている

  • 料理を食べるとき、脚付きのお皿を使う


ナガ料理における特殊な食材について

bamboo shoot

筍をバナナの葉に包み発酵させた物。中国食材店で買える福州荀糸やベトナムの感想タケノコなどが代用になる。味付けメンマでも。独特のアンモニア臭があるが、煮込むと旨味に変わる。

axone

読み方はアクネ。またはアクニー。「匂いが強い」という意味らしい。
大豆から作るが日本の納豆とは違っていて、代用するなら韓国のチョングッチャンという味噌が一番近い。
バナナの葉で発酵させた後すりつぶし、さらに暖炉のそばに置いて発酵させる。


anishi

サトイモの葉を加工し、発酵させてつぶしてまるめて、火で燻製したもの。


犬肉

犬肉は全く食べない人もいれば週に一回程度の頻度で食べる人もいるという。中国料理店で試しに食べてみたので感想はこちらに記しておいた。


密林で育まれた食文化であることもあり、カイコなどの虫も普通に食べられている。

代表的な料理

Samathu

豚燻製のピックル


Akibeye

里芋とマスタードの葉のマッシュ


Fish in bamboo

魚と筍を竹の中で調理したもの


Galho

豚と納豆入りキチュリ


Zutho

どぶろく


Amrusu

鶏のおかゆ


Tomato Chutney

唐辛子とトマトのチャトニー


Smoked pork in Akhuni

豚とアクニのカレーを納豆で代用したレシピ。


Awushi kulho

油も玉ねぎも使わないナガのチキンカレーのレシピ。


Rosep Aon

発酵筍の液で野菜を煮たもの。単にボイルドベジタブルと呼ばれることも。


日本でナガ料理を食べられるお店


なし。福岡に日本語ペラペラのナガ出身の方がいるらしい。


参考情報

書籍:

・『食べ歩くインド』北・東編

・『西南シルクロードは密林に消える』

・『ナガランドを探しに』


映画

・Axone 
日本では観られないみたいだけど、北東から都市部へ移住したインド人の社会問題をコミカルに描いた映画らしい。

・ナガランドの農村を舞台にした映画


Web



購読者限定パート(資料共有)


ここから先は

0字

◾このメンバーシップについて 日本にインドをつくる。カレーとインド料理研究のためのオンラインコミュニ…

ガラムマサラプラン

¥999 / 月

いただいたサポートは全てカレーの材料費と東京マサラ部の運営資金となります。スキやSNSでのシェアもお願いします。 インド料理やカレーの本を出したいです。企画案がたくさんあるので、出版関係の方、ぜひご連絡ください。