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ネパール料理のnote🇳🇵-作る編- 【東京マサラ部活動レポ】

食べる編に引き続き、東京マサラ部室でネパール料理を実際に作ってみたレポートです。ネパール料理の概観をまとめてから、作った料理のレシピと試行錯誤の履歴をご紹介します。

このnoteを読むことで、ネパールの民族、地理の概観を抑えつつネワール料理、タカリ料理、ヒマラヤ料理の区別がつくようになります。
また、ダル、スクティ、グンドゥルックなどのネパール料理がつくれるようになります。

気づけばまた予定していた字数を著しくオーバーし、マニアックな内容になってしまいました。ネパール料理好きな方にはきっとお楽しみいただけると願っております。


東京マサラ部室では、自由に旅ができない閉塞感を打開するため一ヶ月毎に料理テーマを決めて、インド亜大陸料理を順番にリサーチしながら旅するように暮らしています。11月はネパール料理がテーマでした。

ネパール料理を初めて食べたのは日本だったのですが、二年前実際に現地を訪れてみて、ますますこの国のことをちゃんと理解したいと思いました。国や文化を理解するためには、料理を通して実際に体験してみるのが一番ですね。

本記事はカレーシェアハウス応援マガジン「東京マサラ部、インドを作る」購読者向けの限定公開記事となります。

・場としてシェアハウスが発展していく様子
・インド亜大陸料理のDIY
・カレーと人間の関わり

が主なテーマとなります。

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気づけば東京マサラ部住民と同様にマサラ、ラブになっていることでしょう。


ネパールの地理、民族の概観

ネパールは国土面積が日本の4割(北海道の二倍くらいの大きさ)にも満たない小さな国ですが、複雑な地理的条件や歴史的背景が重なり、多数の民族が暮らしていることが面白い料理文化が発達している理由だと思います。

ネパールの国土は大きく南部タライ低地中間丘陵地帯北部山岳地帯の3つに分かれていて、それぞれ気候が異なります。猛暑のジャングルからヒマラヤ山脈に続く高原までバラエティに富む国土で、標高100m〜4000mまでの高低差があります。

また、海を持たない内陸国であり、長年にわたりインド、チベット、近年では欧米からの影響を強く受けてきていて、人種と民族が複雑に入り組む多民族国家です。そのため「ネパール」と言っても一言では語り尽くせないようです。

ネパールの人種は細分化すると100以上あるみたいですが、大きく2つに分かれています。すなわちアーリア系のインド・ヨーロッパ語族Khas(パールバテ・ヒンドゥー)の人々と、日本人とよく似た顔のモンゴロイド、チベット・ビルマ語系の人々です。にチベット・ビルマ語属系の人々は、更に中間丘陵地帯に住んでいるライ、リンブー、タマン、ネワール、グルン、マガール、タカリなどに分かれ、中にはネパールよりもむしろチベットに近い文化をもつようなシェルパなどヒマラヤの民族もいます。(ネワールはアーリア系とモンゴロイド系の中間っぽい感じで議論が分かれるらしいです)

インドもそうですがネパールはもともと一つの国だったわけではなく、ヒマラヤのふもとにもともと色々な部族の人々が住んでいたところにたまたま国家ができて、同じ国の人々として扱われるようになったと考えたほうがわかりやすいようです。


民族別の料理

ネパール料理と言っても様々な知られざる郷土料理がたくさんありますが、主食は日本と同じく米です。米中心の食事に様々な副菜がつきます。

本当は民族別にスポットを当てて理解していくとどんどん解像度が上がっていくと思うのですがそこまでの知識は持ち合わせていないし、ネパールでも少しずつそういう境目がなくなってきているようです。例えば昔は東部のリンブー・ライ族しか食べなかった豚肉を近年では他のネワールやタカリなどの民族も食べるようになったという話を聞ききました。

100以上もあるという民族の一つ一つにスポットは当てられないのですが、概観を理解するためにあえて料理が特に有名な民族をあげるならばこの3つではないでしょうか。すなわち、カジャ(軽食)で有名なネワール族の料理、豪華なカナ(ダルバート)で有名なタカリ族の料理、モモやトゥクパなどチベットの影響を多く受けたヒマラヤ料理です。


ネワリカジャNewari Khaja

ネパールの人々は、食習慣的に一日に二度カナ(ダルバート)を食べ、合間合間にカジャという名の軽食を取るようです。カトマンズに行くとカジャガル(直訳すると軽食の家)があり、好きな料理を選んでつまみながらお酒を飲んだりできるようです。

ネワール族はそんなカジャが有名で、まとめてNewari Khajaと呼ばれたりします。ネワールはお祭りや年中行事が多く、そのたびに特別な料理を作って食べたりするのだとか。

カジャの盛り合わせはサメバジ(サマエボウジ)と呼ばれ、カトマンズでもあちこちで食べられていました。真ん中に潰して干したお米のチウラがあり、取り囲むようにアチャールachar(漬物やペースト)、チョエラchhoyela(藁焼きした肉)、サデコsadeko(マスタードオイル和え)、サーグsaag(葉野菜の炒めもの)が並べられていました。写真のように、そこにダールがつくこともあるようです。上に乗っているのは豆のペーストを焼いたお好み焼きのバラbara

新大久保では葉っぱでできたお皿の上に乗せて提供されることが多いようで、それが伝統的な形なのかもしれませんがカトマンズでは見かけませんでした。

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カトマンズで食べたNewari Khaja。いろんなバリエーションがある。

タカリカナThakari Khana

Thakali Khanaタカリカナで有名なタカリ族は、ヒマラヤ山脈の古くからの交易路を通るタッコーラ渓谷に住む民族で、交易路を行き交う人々の泊まる宿でのおもてなし料理として発展した経緯があります。おもてなし料理なので食器にもかなり気を使っていて、真鍮製の重い食器を使っているのはタカリ族が中心のようです。

タカリカナは一般的なダルバートとは区別されるくらいとても特徴的で、写真を学習させたらAIで識別できるんじゃないかというくらい。

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