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【指読書】高さにして約3m以上の文献を読みとおした旧帝大博士課程大学院生(研究者)の読書術:紙書籍の「しおり」は下からはみ出るように挟む

My読書術を公開します。以下記すところの読書術を「指読書」と名付けることにします。

(1)書籍の選定

趣味の読書でない研究者の仕事としての読書(文献調査)は系統的に行うべきであって、散漫な読書はほとんどの場合身につかず無駄である。
そこで書籍の選定は読書術の大きな要素となる。
まず、分野についての見通しを立てる必要があり、まず手に取るべきは(もしも存在するならば)概説書である。次に分野ごとの事典(いわゆる「ことてん」)。次に「講座もの」である。

①概説書
②事典
③講座もの

これら①②の基本文献は優先的に入手し、図書館から借りだすのではなく所有すること。③も書架と財布に余裕があれば購入することをおすすめする。

総論部分が頭の中でイメージできれば、単行本や学術誌などで論じられる各論へと進むことができる。
書籍との出会いは書店や図書館などで直に対面するのが望ましい。
「CiNii」などで検索して出会った文献を手掛かりとしてそこの参考文献から「芋づる式」で文献リストを作成するのも有効ではあるが、「CiNii」のデータは完全ではないことも留意する必要がる。
必要な文献は何らかの形で「自己紹介」してくるので、ピンときた文献を手に取ればよい。

(2)概観をつかむ

いわゆるサーベイ。まず目次に目を通して論点を頭に焼き付けたうえで、時間をかけずに一度通読する。
これは予習的段階である。私は本を1~3回にかけて読む。
この段階で読み込む必要が薄いと感じた文献は役に立たないので以下の過程はきっぱりと省略する。

(3)読み込みとメモ

自分なりのペースで読み込む。普通の読書である。
わたしは線などは引かない。書き込むこともしない。その代わりに指で本の厚みを記憶する。本を保持したりページをめくる動作も読書経験の構成要素である。
メモは必要に応じて適当な紙に書き散らす。汚い字でもよい。
重要と思われる内容はコレクトというメーカーの「京大式カード」に清書する。これが紙のデータベースになる。
余談だが、わたしの場合は論文の題材になりそうな着想は京大式カードに「blueprint(青写真)」という題をつけて管理している。大体論文の骨格はこの時点で出来ており、結論も出ている。あとはこの作業仮説について検証するだけだ。

http://www.correct.co.jp/cgi-bin/cartz/cart.cgi

(4)寝かせる/積む/忘れる

再読する必要がある文献はすぐに再読せずに3か月~数年寝かせる。
この過程は「忘れる」ために不可欠である。
「忘れる」という体験は「未知/無知」とは似て非なるものであり、一度忘却することは記憶を強化する上で要となる。
積むことも重要である。縁あって購入された本であってもタイミングや難易度、優先順位的な要因で積まれることが多々ある。
そうした「積読」の本は読まれるときを待ってくれているので、その時に達するまで修練を重ねることである。なにも恥じる必要はない。

(5)再読する

ここでノートを取る。
ノートの取り方は下記のリンクを参照していただきたい。

(6)データベース化する

書誌情報をエクセルで管理する。これが外部記憶装置としてデータベースになってくれる。詳細はノートに書いてあるので、相互参照しやすい。

具体的な本の読み方(しおりづくり~指読書)

ここで具体的な本の読み方について解説をしたい。

①しおりの準備

まずA4のコピー用紙を準備する。
これを30センチ定規に合わせて定規の幅(3.5センチ)を目安に縦に裁断する。ハサミなどは不要で、定規を当てて紙を引き裂けばよい。
これを栞(しおり)にする。

②しおりを挟む場所

これを本の読み進めたい箇所に挟む。たとえば論文の終わりや章の終わりのページなどである。

③本の持ち方

縦書きの本であれば左手に持ち、横書きの本であれば右手に持つ。
なぜこうするかというと右から左に読み進める縦書き文献の場合、しおりは左手側に挟んであるからである。横書きの場合は右手側にしおりがあるはずである。そこで指読書の意義が生じる。

④指読書

そして保持している方の手の親指の腹で今開いているページからしおりまでの厚みを計測しつつ、読書のペースを加減調整しながら読み進めるのである。厚みによって読書に要する時間を予測することができるので、こうすることで挫折を防げる。わたしはこれまでこの方法で挫折したことがない。

⑤読み終えたら本を閉じる

読み終えたら章の最後に挟んだしおりは、そのとき次章の先頭に挟まっているはずである。そこで本を閉じる。

⑥(オプション)読みながら気を散らす

気を散らすことも重要な示唆を与えてくれる。気が散漫になってきたタイミングで脈絡なく全然関係ないことが脳裏に現れることがある。これは重要な気づきであり、これはすかさずメモにとる。

おわりに

以上の方法で枯野は少なく見積もって積み上げた高さ3m以上の本を読んできた。
備忘のために恥をしのんで本記事をものした次第である。

令和三年三月二十五日 枯野

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