パーキンソン病の映画紹介(またかい)

パーキンソン病の映画紹介(またかい)
https://www.youtube.com/watch?v=R9L0g-TeRC4
今回ご紹介する映画は2015年のアメリカ(またニューヨークが舞台ですが)の作品A Late Quartet (邦題:25年目の弦楽四重奏)です。
ベートーヴェンの最も内省的は弦楽四重奏である作品131の演奏を主題とし、チェリストが病気のため引退せざるを得なくなったときに25年間の内部の想いがあらわになってドラマが展開する筋で、クラシックファンとくに弦楽器奏者には演奏もふくめてとても興味深い映画です。
チェリストがパーキンソン病を発症するところから映画は始まります。作品131の冒頭は第一バイオリンから順にフーガのテーマがアダージョではじまり、演奏するには集中力と研ぎ澄まされた音程感覚と正確なタイミングが要求される部分で、♯5つのこの楽譜を知っている奏者にとっては神の曲です。シーズンの最初のリハーサルで4番目にでるチェロが4番目の下がる音で最初にわずかにタイミングが遅れます。プロの演奏としては不合格で「合わない」としてもう一度弾いてみます。すると今度はその音を外して音色も雑になります。練習は数分でストップ。チェリストのピーターは自分の手の動きが上手くないのに気がつき、医師の診察をうけます。Nadirとよばれるneurologistの診察室は広くて一面の本棚がありまるで学者の書斎のようです。私服で診察しており本当にこれがクリニックなのかと思いますが、MRI画像を映すモニターもあるし電子カルテもおいてあるようでやはり診察室のようです。NYの診察室いいなあ。診察は上肢を前方に挙上させて手の開閉をやってもらう(UPDRSで標準の手技)や歩行の観察を登場させていました。初診であなたは早期のパーキンソン病であろうといわれます。採血とMRIがオーダーされます。ここまでのシーンでも手の開閉の遅さや、全編にわたりピーターの仮面様顔貌がよく演技されており、映画のレベルの高さがうかがえます。ピーターは全てを理解し、今季の最初の演奏会で引退すると決心します。パーキンソン病と診断されたチェリストは早期リハ教室のような所に参加します。インストラクターがパーキンソン病はどんどん動きが小さくなる病気ですから大きく動きましょうなどといって、体操をしますが、動きの精緻の極みともいえる弦楽四重奏を生業としている彼にはあまりにショックだったようで唖然としています。
もう一つ印象的なシーンは地下鉄で小さい女の子が車内広告のOgden Nashの詩を読む場面です。People expect old man to die で始まるフレーズにピーターは大きく傷ついているようです。
最後のシーンは約束通り新しいシーズンのオープニングコンサートです。一流カルテットの新シーズン、満席の観客を前に131の演奏が続いていきます。最後の第7楽章でピーターは弾くのをやめ、曲が止まります。ピーターは速くてついていけません。この曲はアタッカで演奏される曲ですが私はもう弾けません、引退しますと観客に説明し、新しい若い女性のチェリスト席を譲って映画はおわります。
パーキンソン病のシーンだけをとりだして解説しましたが、それは映画の一部分にすぎません。音楽映画としてNY映画として楽しめる大人むけの作品です。

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