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フジロックでHalseyを観て、却って邦楽について考える

アメリカの産んだお化けシンガーソングライター、Halsey。フジロック最終日のヘッドライナーとしてブッキングされていたので、観てきました。びっくりしたので記事を書きます。

▽他の各日の模様は、下記からどうぞ▽

邦楽はガラパゴス化している

正直、Halseyの日本での知名度は、抜群とは言えないと思います。洋楽を追っていない、純邦楽の人たちからすると、アーティスト名は聴いたことあるし、確かに有名曲を聴くと、「あ、これってHalseyの曲なんだ」ってのが、数曲ある程度じゃあないでしょうか。

私も、多分に漏れずその一人。そもそも、邦楽のガラパゴス化が叫ばれて久しいですが、確かに今や英米のトップヒットが日本のヒットチャートに食い込むことは稀で(除くK-POP)、また逆に日本のトップヒットが海外で話題になることもほとんどありません(除くアニメ関連)。この現象の是非をここで論じることはしませんが、とにかく、邦楽がガラパゴス化しているのは確かな現象だと思います。

Halseyのステージアクト

そんな中迎えた、フジロック3日目のHalseyのアクト。トップヒット数曲と最新リリースくらいの最低限の予習はしていきましたが、さすがに3日間で膨大な数のアーティストが出るフジロックにあっては、その程度。しかも、Halseyはロックスターではなく、ボップスター。正直なところ、「どないなもんじゃい」くらいの気持ちで望みました。

ところが、もうのっけの登場から圧巻。眩い光の中からHalseyが現れ、怒れるデモの画像がバックスクリーンに次々に映し出される中、性差別への抵抗を謳う「Nightmare」を熱唱。とにかく度肝を抜かれると共に、体力的には限界が来ているのも忘れたように、一気にアクトに引き込まれました。その後も、グロテスクな映像が背景を流れる中、何かへの抵抗や怒りを謳う曲が続きました。

考察

ワールドクラスのポップ

とにかく、ここでは2点。まず一つは、ワールドクラスのスターの凄みについてです。Halseyはシンガーソングライターであり、アイドルではないのですが、ステージの全てが計算され尽くされていました。バックスクリーンや照明、特殊効果から、本人の立ち位置、次の曲への間、MCの内容に至るまで、ステージ上の全てが計算の上に作られていると感じました。

特に驚愕したのは、幕間のMC中の出来事。一瞬、なぜかイレギュラーに観衆が盛り上がって拍手が巻き起こったタイミングがありました。その時にはもう次の曲のイントロが流れ始めているのに、ふと、その盛り上がっている集団の方を向いて、バレエのレヴァランスのようなお辞儀をし、顔を上げたタイミングですぐAメロが始まったんです。

これはすごい。あの一瞬の中で、反射的にアクションを返して、しかもぴったりの間で次の曲に入っていく。こうした異次元のパフォーマンス力の裏には、本人のセンスや努力に加え、抜群のプロデューサーがついているはずです。改めてアメリカの音楽業界の桁違いの懐に驚いたアクトでした。

コンセプトのあるアーティスト

そして、もう一つの点。Halseyは舞台の間、何度も「あなたはあなたであって、他の何者の所有物ではない」というような趣旨のことを繰り返し言っていました。こうしたメッセージは、楽曲の中にも至る所に散りばめられており、Halsey自体がそういうメッセージを持ったアーティストだという、一種のストーリーが形作られさえあったのですが、このような、メッセージやストーリーを持った、コンセプト性のあるスターは、日本にいるでしょうか。

これは、日本人の気質にも関わる問題かもしれませんが、なんだかんだで、日本はまだ一応世界3位の規模の国。その規模感を考えると、アイドル的にカルト人気のあるアーティストだけではなく、こうしたコンセプトで人を惹きつけてカルトを形成するようなアーティストもいていいはずです(ちなみに、今回のフジロックの邦人の中では、Awichのアクトでこうしたコンセプト性を感じました)。

終わりに

邦楽がガラパゴス化しているからって、私個人が洋楽を聴かない理由にはなりません。その意味で、ワールドクラスのポップスターの凄みに唖然とし、これまで洋楽をほとんどフォローしてこなかった自分を恥じ入るステージになりました。

ただ、こんなに素晴らしいステージだったのに、前2日のヘッドライナーと比べて、会場の盛り上がりが微妙だった気がします。知名度の問題でしょうか。拍手のタイミング間違いも散見されました。これでHalseyが気を悪くしていたら困るなと思いましたが、その後、Tik Tokには上機嫌でセブンイレブンで買い物する姿が映っていたので、なんとか耐えているのか??

なお、私が衝撃を受けた部分に限ってHalseyの一面を切り取った記事を書きましたが、多彩な楽曲が他にもあります。例えばフジロックでも演奏があった「Colors」は、男の子と女の子、そして男の子の父親の3人の三角関係を歌う曲。男の子は女の子が好きなんだけれども、その女の子は、なんと男の子の父親に恋をしている、という無茶苦茶な感情を、女の子の視点から色に喩えて歌った曲です。

かなり長々と書いてしまいましたが、今年のフジロックの個人的ベストアクトはJack Whiteに譲るものの、衝撃の大きさと言う点では、負けず劣らずだったHalsey。これからは、洋楽ももっと勉強していきます。


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