ホラー小説「ドールハウス」第11話 執着
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23.春香
ドアから、コンコンとノックする音が聞こえた。
その後、ドアが開いて愛美がこの部屋に入ってきた。
愛美の手には目打ちとボウガンを持っていた。
どこか不気味だった。
「モニカちゃん、みーっけ。」
愛美は私のことを「モニカちゃん」と呼んでいた。
私が知っている愛美とは違い、狂気に染まっていた。
愛美は不気味な笑顔を浮かべて、私を押し倒した。
私の上に愛美が乗っていた。眠くて、理解できなかった。
愛美は急に私の服のボタンを外した。
私の上半身は下着だけになって、胸を露出していた。
友達なのに、なぜか怖かった。
愛美は私の胸を触って、私の鼓動が早くなった心臓を探っていた。
「助けて、愛美。」
なぜだろう、愛美に襲われているのに愛美に助けを求めている。
「グサッ!」
愛美は私の心臓を狙って、目打ちで胸を刺した。
自分の胸から大量の血が出ている。
「早く助けて、美夏さん。」
次は幻覚だと思い込んでしまって、存在を否定してしまった美夏さんに助けを求めた。
美夏さん、ごめんなさい。
視界にぼんやり映る愛美さんの顔を見てると、愛美と一緒に過ごした楽しい思い出を思いだす。
「春香ちゃん、かわいいね。」
勉強を教えてくれたり、文化祭用の写真を撮りに水族館に行ったり、私の好きなタレントの話に付き合ってくれたり。
友達だったのに、私はその友達に殺されてしまった。
意識が薄くなっていく。
私はもう、死んだみたい。
私を育ててくれてありがとう、お母さん、お父さん。
24.美夏
一階を探してみた。
しかし、春香は居なかった。
おそらく、二階に行ってしまっただろう。
二階はボウガンと目打ちを持った佐々木愛美がうろついていて危険だ。
しかし、春香の安全が気になる。
あたしは怖いけど、二階に向かった。
春香が無事だといいけど。
二階に上り、そこに戻っているのではと思い、まずは最初に目覚めた部屋に入った。
しかし、部屋は目にバラが刺さった死体しかなかった。
次は入っていない部屋を探してみることにした。
目覚めた部屋の隣の部屋に入ってみた。
そこにはグランドピアノが置いてあった。
ピアノの椅子には片腕がマネキンの腕に取り換えられている女の子の死体が座っていた。
スケッチブックに描かれていた義手の女の子にそっくりだった。
「コロン」
近づいたら、死体の目にはめ込まれた青いガラス玉が落ちてきた。
うわっ!
少し、びっくりした。
女の子の右目は縫われていて、ガラス玉がはめ込まれていた左目は目がくり抜かれた跡が生々しく、女の子が愛美にされたことを想像してしまって吐いてしまいそう。
直視できない。
普通、ほかの死体を見ていると気持ち悪く思ってしまう。
しかし、腕がマネキンの女の子の死体を見ていると、なぜかある友達のことを思い出してしまう。
それは、思い出したくない思い出。
とりあえず、二階の部屋を探して安全なうちに春香を探さないと。
次は、佐々木愛美がマリーと呼んでいた死体が飾ってある部屋に入った。
部屋にはぬいぐるみが飾ってあって、可愛らしい。
部屋を物色していると、飾ってある写真に目が入った。
長い髪の小さい女の子が人形を持っている写真だ。
女の子が持っている人形はこの部屋に飾ってあるマリーと呼ばれる死体と服装や髪型がそっくりだった。
写真の端っこの日付は2012年と書いてあった。
何か、愛美のこの人形に対する執着を感じた。
25.愛美
もう動かない。
わたしは春香ちゃんを見つけて、お人形にした。
今日から、春香ちゃんはモニカちゃんになった。
モニカちゃんのお洋服を用意していたので、取りに行った。
わたしが手作りした、絵本の「モニカとふしぎなふで」にでてくるまほう使いのモニカの衣装をモニカちゃんに着せてあげた。
まるで、大好きだったモニカちゃんが絵本から飛び出してきたみたいだ。
春香ちゃんはもともと可愛かったけど、モニカちゃんの服を着せてあげたらすごく可愛くなった。
似合っているよ、モニカちゃん。
早く、マリーちゃんに見せてあげよう。
きっと、よろこんでくれる。
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