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博士課程って本当にエリート?留年危機GPA1.6からの博士進学

皆さん、こんにちは
「将来を愁うとある物理学徒」と申します。
2022年冬現在で、旧帝の物理学研究科で博士課程三年生をしています。(6月から書き始めていた気がするのですが、気が付けば冬に、、、)
私は学部の累積GPAが1.6(学科平均2.5~2.6)と非常に低く、4年生になってもそこそこ単位が残っていました(学部2年生の必修も、、)。
そんな私が大学院修士→博士と進学したことを踏まえ、博士課程についてお話していきたいと思います。

この記事では特に「博士学生はエリートなのか」という観点で議論していきます。
私自身は物理学の博士課程ではありますが、なるべく理系一般に適応できる範囲でお話していこうと思います。(文系の場合は大きく状況が異なる場合があるようので、参考程度になります)
こういった少し変わった情報が博士進学者、在学者、卒業者の皆さんに少しでも有意義な情報となれば幸いです。

博士課程とは

まず博士課程について簡単におさらいしましょう。
博士課程とは、大学の後に入学する大学院の後期課程となります。
大学では所属する領域を学科と呼ぶことが多いですが、大学院では研究科という事が多いです。
大学卒業後、大学院に進学した場合は基本的に修士課程(大学院前期課程)に進学になります。(6年制の大学は修士がなく博士のみだったりもします)
他サイトさんでまとめた図があったので、引用させてもらいます。

画像1
引用:https://daini2.co.jp/tokusyu/rikei/article-1708-author-uzuz03/

雑に言えば、大学の後の後の課程で学生としては最後の課程になります。
博士課程と修士課程の違いは大学と大学院の差程大きくありません。
しかし、博士課程は修士課程より研究の重要度が上がったり、求められるレベルが高い等の点から修了難易度が大きく向上します。
その具体的な違いについては別記事で(現在建設中)

https://note.com/preview/n5a5a0466f051?prev_access_key=456a2e5c97d21f58aef71c96fb4a5a5e

私の博士課程経験談

私は学部時代のGPAが約1.6(最大値4.0)でした
学科の平均が2.6ぐらいだったので、成績は相当悪い方だと思います。その理由としては最も大きいものは単純で、勉強が嫌いだったんです。(意外がられますが)
それぐらい勉強と研究って近いようで遠いものなんですね。
実際に周りの博士に聞いてみると、割と成績上位と下位で明確に分かれる印象です。普通ぐらいの成績の人ってあんまり見ないですね(成績が良い人の方が多いとは思いますが)。
そういう意味では、成績上位者だけが博士進学するという訳ではないんです(自分もその一人)。

では本論に移っていきたいと思います。

まず、エリートとは何なのか?

エリートの定義とは?

エリートとは何かの定義を確認しておきましょう。

エリート【(フランス)élite】
社会や集団で、指導的、支配的役割を受け持つ層。選良。「—意識」

出典 weblio辞書

雑に解釈すると、エリートとは人の上に立つ立場の人間といえると思います。
この記事では基本的には会社の中をイメージし、チームで仕事を行う上での指導的・支配的な役割を受け持つ人をエリートと呼びます。
(個人の生活に注目すれば、メンターなんかもエリートなんですかね?)

エリートに必要な能力や考え方とは?

エリートをエリートたらしめているのは、一般の人ではなかなか持ちえない能力とマインドセットであり、片方だけではうまくいかないでしょう。
では、それが具体的になんなのか考えてみましょう。

指導者に必要な能力とは?

指導する目的から逆算してみます。
自分が上に立ち、人を指導する目的は「長期的な目線で、チームの成果を最大化する」事ではないでしょうか。

それを踏まえて、人を指導するのに必要な能力はなんでしょう。
私は、
「チームとして付加価値(出すべき価値)を理解する」
・「メンバー個々人の個性・能力を把握する」
・「今のチームとして必要な能力と不要な能力を判断する」
・「長所の伸ばし方、短所の改善方法を具体的に理解する」
・「指導相手に正しく考えを伝える」
・(「集団の空気を良くする?」)
が必要な能力なのではないかと考えています

少し細かく分けましたが、上の要素を全て持っているリーダーがいたらメンバーが必要とされている能力を伸ばす事ができ、成果も最大化されていくと考えました。
エリートに必要な要素出しを終えたので、今回のメインディッシュに
行きたいと思います。

博士はエリート(予備軍)なのか?

では、博士学生はエリートになれるのでしょうか?(もしくは、なるのに適した環境なのでしょうか)

大前提として、研究室によって指導方針や環境が大きく異なります。
なので、あくまでも比較的一般的な研究室であればこうであるだろうと均した結論だと思ってください。(もしかすると文理で大きく違うかもしれません)

私の考えは「今の博士課程はエリート養成のための期間ではない」

博士課程では、卒業において必要な単位は学士や修士と比べて少なく、その多くが研究関連のものです。
また、博士論文も当然研究活動の結果をまとめたものになります。
なので、博士学生の時間は「研究活動」に多くの時間が割かれ、受ける教育も「研究指導」にが殆どです。
そのような背景から博士学生は専門バカ(専門以外は何もできない)だと批判する声もあるようです。
また、博士課程は比較的自由な事もあり、知識や経験についても個人差が大きくなります。
ただ、義務として与えられている範囲に注目した場合、広い知識や様々な経験を得る事に注目した場所ではないのは確かでしょう。
(最近はそういった問題意識から、ジョブ型インターンシップや博士教育プログラム等で経験を積ませるようなカリキュラムが増えてきましたが)

では、博士学生はエリートになり得ないのでしょうか?

私は半分なり得て、半分なり得ないと考えています。
私調べではありますが、博士課程は「専門のみに強い興味を持つタイプ」と「専門外にも広く興味を持つタイプ」がいます。(好奇心が旺盛でない人は見たことないです)

前者は皆さんがイメージする通りだと思います。
例えば物理だったら物理に興味を持ち(多くの場合より細かな分野に注目している)、工学や医学など他の学問にはあまり興味がないパターンです。
専門に強い興味があったが故に博士進学をした人ですね。

後者はもしかすると意外に思う方もいるかもしれません。
そのタイプは知的好奇心や探求心が強く、比較的興味が強かったのが専門科目であったため、その専門の博士課程に進んだタイプです。
そのため、興味の対象は他にも向いており、機会や時間さえ他分野でも勉強・研究をしたいと思っています。

エリートという観点においての比較

前者はわかりやすく専門家向きの性格になります。興味や好奇心が原動力である人が殆どである以上、逆に興味がない分野では発揮できる力は大きく下がってしまうでしょう。ただし、専門分野内での管理職への適性がある可能性も大いにあります。(ずっと現場にいる事を強く希望する傾向にあるとは思いますが)

後者はより一般的な目線でエリートにもなり得る人材です。
人の管理をするという事は、知識面でも多くの場合専門一点突破では足りません。
そのため、最も重要な事はメンバーの個性をチームとして活用する事であり、本人が全ての専門性の詳細を理解する事ではないと思います。(理解できる事に越したことはないですが、両立が非常に難しい)
とはいえ、チームの仕事内容を何も理解せずに管理するというのは不可能ですので、広い知的好奇心と高い学習能力を持ち合わせる博士経験者には優位性があると考えられます。

博士課程はエリート養成環境として適しているのか

上では中にいる人に注目して議論してみました。次に環境面の議論をしたいと思います。
結論としては、
「現状の博士課程環境は、エリート養成には向いていない」
というのが私の考えです。
その理由は単純で、研究以外の義務が殆どない事にあります
いくら学習能力が高かろうが、興味があろうが受ける教育によって人は大きな影響を受けます。
エリート養成のための教育がなされていない以上、勝手にエリートになっていく可能性は非常に低いと言えます。

博士課程をエリート養成のための期間にするべきかどうか

これは非常に難しい議題だと思います。私も明確な答えを用意できていません。
なので、今の所にはなりますが「基本的にはエリート養成に向かわない方がよい」というのが考えになります。
つまり、今のような専門家育成目線の方を優先すべきと考えています。(このままの教育課程で良いのかはまた別の議論が必要)

突破力のある専門家というのはどの時代も必要とされるものです。
そこで、ジェネラルな能力を落としてでも高い突破力を身に着けられる場所も当然必要になると思います。
私個人としては、博士課程は「私のような少し好奇心旺盛な凡人が専門性・突破性を身に着けられる場所」であってほしいと思っています。

結論まとめ

博士学生の持つ個性はエリートに適している場合もある。
しかし、環境がそれを後押ししているわけではないので、自発的にエリートになっていくとは考えにくい。
博士課程をエリート養成課程にすべきかについては、私はそうすべきではないと今は考えている(議論が分かれるとは思います)。

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