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普通の薬剤師がPdMになりました Part.2

この記事はPharmaXアドベントカレンダー2023の16日目の記事です。


こんにちは。PharmaX株式会社でオンライン薬局「YOJO」のプロダクトマネージャーをやっています、横澤です。

<簡単に自己紹介>
薬剤師7年目。新卒で大学病院に就職し病院薬剤師として従事、その後薬局薬剤師を経験したのち、2021年10月にPharmaX(旧YOJO Technologies)に入社。
最初は薬剤師として患者さん対応をメインでやってましたが、少しずつPdMぽいことをやりはじめ、今はPdMとしてプロダクトづくりに関わっている、という少し変わったキャリアを歩んでいます。

ちょうど1年前のアドベントカレンダーでは、私がPdMとなって感じた、薬剤師との共通点や、薬剤師がPdMをやるメリットについて書かせていただきました。

今回はそこから1年経って、「薬剤師と違いすぎる、、、!!」と感じたことを書かせていただければと思います。

(アドベントカレンダーはエンジニアの方が多く読まれているかと思いますが、ご興味あれば読んでみてください)



答えに正解がなさすぎる

ずっとプロダクト開発に関わってきた方であれば「当たり前のことだな〜」で済む話かと思いますが、薬剤師しかやってこなかった私にとっては大きすぎる壁でした。

薬剤師は医師が処方した薬、その用法用量が“正しいかどうか”判断することに責任を持っていますが、“正しいかどうか”という時点で正解/不正解が存在していることは明確です。

ただプロダクト開発は常に答えのない問いに向き合い続けるので、ここはとても大きな違いです。

なぜこの大きな違いに苦戦してしまうのか、PdMと薬剤師の仕事を比較していければと思います。

Whyを考える仕事 vs Whyが明確な仕事

PdMは、顧客(弊社にとっては患者さん)をどんな状態にしたいか、なぜそれを自分たちがやるのか?を考え続ける仕事かと思います。

それに対し患者さんに何か課題が生じていれば、そこからどんな状態にしたい(というか、すべき)というのも自動的に決まる上、なぜ自分がやるのか?なんて考えもせず「それが薬剤師の仕事だから」というのが薬剤師の仕事です。

<例>
課題:患者さんが肩を痛めている
どんな状態にしたい?:肩の痛みをなくす
なぜ自分がやるのか?:やらない選択肢はない

そもそも薬剤師の場合、課題を解決したい対象は目の前の患者さん「1人」です。なのでその人をどんな状態にしたいのかも、おのずと導かれます。

それに対しプロダクトづくりのターゲットはもちろん1人ではないので、だからWhyを考え続けないとプロダクトの軸となる部分がぶれてしまうと感じています。

What-Howを導く仕事 vs 決まったWhat-Howが用意されれいる仕事 

薬剤師の場合ほとんどのケースにおいて、何か患者さんに課題があれば、それに対してのソリューションはすぐに決まります。

<例>
課題:患者さんの腎臓の機能が落ちてきた
ソリューション:腎機能の低下に影響してそうな薬を減量する or 腎臓に負担のかからない薬に変更する

プロダクト開発の言葉に置き換えると、「Whyが決まればWhat-Howはもう固定のパターンが存在している」という感じです。

もちろん患者さんに生じている課題の複雑さや、薬剤師自身の知識量や経験量によっては、ソリューションがわからないという状況も発生する思います。
ただソリューションがわからなくても、添付文書やガイドライン、他の薬剤師の経験から、答えを導くことはできます。

このような感じで、薬剤師としては必ずアウトカムが出るような選択肢を選び続けてきたのに対し、PdMとしては本当にアウトカムが出るのかどうか分からない状態で仕事を進めることは、とても大きな違いで難しい部分です。
不確実性をゼロにはできないが、限りなく減らすための分析力の必要性もひしひしと感じています。

(ここまで聞けば、薬剤師はソリューションやアウトカムが明確で楽だなと思われそうですが、実際は大変な職種です!笑)

課題の抽象度の違い

先にも書いたように、薬剤師は常に目の前の「1人」の患者さんに向き合い続ける仕事です。なので常に「虫の目」で働いてきました。

それに対しPdMは「鳥の目」も合わせて必要です。
具体的にどんな課題が起きているかを把握した上で、それを抽象化し、問題の本質を見極めなければなりません。

そんな具体の視点ばかりを持って患者さんに接していた私にとって、抽象の視点ももち、かつ抽象⇄具体を行き来しながら課題の本質に辿り着かなければならない、PdMとして必要な思考力はかなり苦戦しました。
なぜそんな違いがあるのか、比較させていただければと思います。

やるかやらないかを意思決定する仕事 vs 全てやらなければならない仕事

プロダクト開発において、具体の課題に一つ一つ対応し続けても、いつまでも表層的な課題解決になってしまいます。エンジニアのリソースも限られますし、いつまでも根本解決には至りません。
またそんなことをしていては、よく例としてあげられる、魚に鼻がついたり足が生えたようなプロダクトになってしまい、軸のブレたプロダクトになってしまいます。

それに対し薬剤師は、患者さん「全員」を健康にする過程で責任を負っているので、目の前に起きている課題に対しては、全て、その場で解決していかなければなりません。
根本的な改善をすることはもちろんですが、表面的に起きている課題も都度解決する必要があります。

弊社のプロダクトにおいても薬剤師として対応していると、「この1人の患者さんにはこのプロダクトの体験はよくない」という場面はもちろん生じてしまっています。かつ薬剤師目線だと、そう感じる部分をどうしても変えたくなります。

ただPdMとしてはそのインパクトをターゲット数、確度、実現の難易度など様々な変数から見て「やらない」という判断も必要になります。
このように「患者さん全員は救いきれない」という、健全な妥協は必要だということは大きな違いです。

優先順位をつける仕事 vs 優先度が全て同じである仕事

PdMとしては「最小のアウトプットで最大のアウトカムを出す」ことが求められると思いますが、具体の課題に対して表層的に解決していっても、最小のアウトカムしか得られない状況になりかねません。

それを防ぎ、やるやらないの判断をしやすくするために、「優先順位をつける」ということもPdMの大事な仕事です。
ここで優先順位をつけないと、貴重なエンジニアのリソースを無駄遣いするような結果になりかねません。

それに対し薬剤師は、上にも書いたように、患者さんに生じている課題は「全て」解決しなくてはなりません。
その課題の大きさに関わらず全てやらなくてはならないので、優先順位はどれが高いどれが低いということは(患者さんのQOLを著しく下げるような課題でない限り)ありません。

このように優先順位もなにも、課題を見つけたらその場ですぐに対応してきた状況から、課題の抽象度をあげて優先順位を正しくつけるという考え方の違いは苦戦した点です。
今でも気づいたら虫の目で何をするかを考えていた、という状況になっていることもあります。
そうならないように、抽象⇄具体を行き来して本質的な課題を捉え、「最小のアウトプットで最大のアウトカムを出す」にはどこから解決していくべきか?という思考がPdMには必要なスキルだと感じます。

最後に

「教科書的」なPdM像に囚われすぎると、このような今までとのギャップから壁にぶち当たり続けてしまいます。
まずは教科書的なPdMを知り、その中でも絶対に必要なスキルは身につけるべきですが、そこからは自分だからこそできるPdMとしてのやり方を、今の自分たちの状況に合わせて見つけていくことが必要だと感じています。
今もなお進行中ではありますが、試行錯誤しながら自分のPdM像を作り上げていきたいと思ってます!

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