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<わかりやすさの創作論1>世界観の説明編<ファントムゾーン観測室>

ほんのつま先ほど先の、近未来の世界で超常現象が多発していた。
そんな世界で、ちょっとしたテレパシーを使う双子が冒険する。

これがファントムゾーン観測室が作成した、アドベンチャーノベルの世界観の概要である。

大幅に要約している。細かい設定を描きだすとややこしすぎるからだ。世界観設定が複雑な作品は、「説明」という多大なコストが生じる。本記事ではこの説明に関する解法について提示、アドベンチャーゲーム、ノベルゲームという表現媒体における特記事項について、語って行きたい。

解法1
冒頭で世界観設定を書きつらねる。

個人的な印象としては、古めのSF小説でよく見るやり方だ。
しかし、私としてはおすすめしたくない。これも個人の印象だが長い説明文を読むというのは、消費者が感じるコストが高すぎるからだ。
しかし、想定ターゲット層の年齢を高めに設定するなどすれば、問題ないと思う。

解法2
世界観を説明するためのエピソードを作る。

ただし、いきなり登場人物に世界観設定を語らせるのは悪手である。
聞く相手はその世界の常識を知らぬ阿呆か、そういう設定ならそれでいいのだが、記憶喪失か異世界転移者ということになる。
だが、他にも上手い方法がある。それに相応しいシーンを用意すればいいのだ。
例えば、その世界の常識を確認できるのが、歴史の授業シーンだ。これはかなりポピュラーな方法だと思う。
主人公が学生の場合、登場人物紹介も同時に行える。
歴史の授業シーンは一例に過ぎない、他にもたくさんいいシーンがあるだろう。

対処方3
ひたすら、小出しにする。

これは少々、上の二つより調整が大事だ。
ストーリーの本筋から外れてしまえば、テンポが悪くなるし、いかに小出し
にするか工夫しなければならない。
例えば映画のように冒頭で、まず「説明」を入れる。
対処法1と同じに聞こえるかもしれないが、違うのは分量だ。
ここにいれるのは抽象的なワンセンテンスか数センテンスでいい、自作のファントムゾーンで例えると、『超常現象が多発する、ほんのつま先ほどの近未来~』程度のモノだ。
次に、その世界にしか存在しないオブジェクトが出るたびに、テンポを崩さない程度の簡単な説明を入れる。しかし、これは文字的情報量の多い小説やノベルゲームではできるが、映画のような媒体だと難しい。
小出しにつつ、いかにしてその世界観の雰囲気を匂わせるかが大事だ。


ノベルゲーム、アドベンチャーという媒体においての特記事項

 アドベンチャーゲームという媒体なら、インタラクティブな機能を実装可能なので説明に消費者が感じるコストを幾分か軽減できる。
名作「ポリスノーツ」では、冒頭のオープニングムービーで世界観、主人公の境遇を断片的に説明し、次のクリップマップ的な探索シーンでは、それをさらに深堀りしたくなるように誘導している。アドベンチャーという名前の通り消費者に探索したくなるように仕向けるのが大事なのだ。
 ノベルゲームという媒体において、世界観に限らず「説明」で個人的に重要だと感じるのが「間」だ。テンポと言い換えてもいい。
誤解を恐れずに言うなら
ノベルという媒体は、制作者側のコストは低いが、消費者側のコストが高い傾向にある。
もちろん、文章が上手い人の文章は読むのに苦にならないし、スラスラ頭に入って来る。
しかし、文章のレベルがそこまで高レベルではないと自覚がある場合は、ある程度は読み飛ばされることも、勘定に入れるべきだろう。
故に読者が、文字情報から状況を理解するまでの「間」が重要なのだ。
映像媒体がやるように場面を、矢継ぎ早に変えるのは避けるべきだ。


次回があれば、キャラ描写や、あるいは創作において「わかりやすさ」についてさら掘り下げて行きたい。

参照作品リスト






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