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「会社の思想を信頼しているから、迷わず全力を尽くせる」 石井食品 村上樹生氏

石井食品株式会社 
経理部マネージャー 兼 社長室経営分析チーム
村上樹生氏


ソーシャルグッドな観点でキャリアを築いている方をお招きし、仕事観、人生観について伺うインタビュー連載。

第1回は「石井のおべんとクンミートボール」で知られる
石井食品株式会社で勤務される村上氏。大学卒業後は政府系の金融機関で勤務し、30歳になるタイミングで石井食品株式会社へ転職

村上氏が学生時代から持つ、目の前に全力を注ぐことへの想いと、農業に関わる課題解決への想いをより体現できる環境へ身を移し、日々を闊歩している

「会社の思想を信頼しているから、迷わず全力を尽くせる」

現場業務でのやりがいと安定に対する危機感を感じたファーストキャリア、そして現職の石井食品における充実感について語ってくれた




ファーストキャリアで味わった仕事の充実感と転職へのきっかけ


学生時代、村上氏は人々の生活に欠かすことのできない”農業・食”というテーマに興味を持ち、様々な社会課題が存在することを知った。この課題解決に取組むという思いを胸に、農業従事者に直接関与できる、政府系の金融機関でキャリアをスタートさせる

新卒の就職活動では代替が効かない業界・会社について考えている中で、農業というテーマに出会いました。人生で農業に携わったことはほとんどなかったのですが、生活に欠かすことができない点を含めこの領域に関心を持ちました。

JAが出版している書籍等を漁ってみると、農業従事者の高齢化を始め様々な問題が視界に飛び込んできました。こういった課題の解決に尽力したいという思いで就職活動を行ったところ、政府系で農業融資も担う金融機関に出会い入行を決めました。

入行した金融機関での最初の配属は秋田支店で、農業融資の営業担当者として3年間、法人/個人の農業従事者に携わりました。都会で暮らす人の中には、所謂田舎での業務に少し大変さを感じられる方もいるかもしれないですが、この期間は充実していたと思います。地域の生産者と直接会話をして、ひざ詰めで課題感を議論するという現場への距離感が充実感を生み出していたと思います。

農業従事者の課題解決に、当事者と二人三脚で取り組む生活が続く中、会社ではポジティブなキャリア形成とされる本社への異動の辞令を受ける。本社では幅広い経験を積むことになるが、心の中で安定した環境への違和感を感じ始めたという

金融機関は大体3年前後で異動があるのですが、私は4年目に東京の本社へ異動の辞令を受けました。本社には5年間身を置くことになり様々な業務に従事しました。予算の策定から省庁への対応、基幹システムの刷新や秘書業務を担う等、比較的幅広い領域に関わっていました。この本社での勤務を通して、非常に多くの経験をさせてもらいましたが、現場に寄り添って自分の想いを体現することが少し難しいと感じ始め、結果的に転職を考えるようになりました。

今後のキャリアを考えたとき、「一定の収入と十分な休日の取得ができる環境」として、安定した良い職場と捉えることもできたかもしれないですが、安定への危機感を感じていたんです。組織の一部として業務を円滑に進める中で、自分の実力はついているのか、実力がついたとしてもそれを正確に反映して対価として給与は返ってくるのかと考えたとき、外の世界だったらどういう評価を得られるのか、そもそも通用するのかと思いました。

こういった思いから、30代で真剣に仕事へ取組む環境として、より自分に適した舞台があるのではないかと思い始めました。


自身の価値観に向き合い、共感できる会社に出会った転職活動


新天地を模索しようとスカウト型の転職支援サービスに登録するが、転職活動の当初は自分の想いを正確に整理できていなかったという。膨大なスカウトを受領する中、特徴的なメッセージを送ったプロビティ・グローバルサーチの代表である高藤と面談を行い、転職活動をスタートさせた

30代では今一度仕事に邁進し、仕事のやりがいも得られる舞台に身を移したいと思い、ビズリーチに登録しました。でも思った以上にスカウトの数が多くてお返事を出す対象を迷っていました。その中でファーストビューが特徴的なメッセージが1つだけありまして、これがPGSの高藤さんでした。たしか、ソーシャルグッドを想起させるような文章で、「変わり種」、というような表現も含まれていたかもしれません(笑)。

最初の面談の際に、転職への意思はある程度固まっていたのですが、自身の想いは正直十分に整理できていませんでした。仕事に邁進するという思いでIT系のベンチャー企業のご紹介を依頼させて頂いたと思うのですが、高藤さんとの会話を通して結局選考に進んだのは老舗の食品メーカーという、当初は全く想像していない会社でした。

こういった方向で転職活動が進んだのは、自分の歩んできた人生を振り返り、自分の価値観を整理したことも起因したと思います。そもそも、「本気で何かに取組むこと」と、「農業に関しての高い関心」を持っていたんですが、これらの形成過程等を振り返るにあたって、高藤さんとの面談はとても重要だったと思います。

過去の自身の歩みを振り返ると、学生時代から少し極端に何かに全力で取り組む素地が形成されていて、ある時は野球に、ある時は勉強に本気で取り組んできました。それと共に、大きな目標を達成しようとするインパクトを残したいという気持ちも持っていて、これらを振り返っていると、多くの人にとって不可欠な「農業」というテーマに今一度全力で取り組むことが、自身の充実に大きく寄与すると高藤さんとの会話も通して整理されていきました。

このように自分の気持ちが纏まる前に高藤さんより紹介されたのが現職の石井食品という会社でした。農業従事者を大切にする会社のフィロソフィー、そして面接官を筆頭とした会社の従業員がとにかくいい人で、とても印象に残っています。

安定した会社を飛び出す事に対して、そこまで大きなリスクと感じることはありませんでした。唯一、年収が少し下がってしまうという点はありましたが、自身の取り組み次第で給料は上がるものと思っていましたし、それ以上に自身の想いに向き合って働く事が人生の充実のためには重要だと考えていたので、あまり時間をかけずに入社を決めていました。


ソーシャルグッドな取組を通した人生の充実とキャリア観


村上氏が共感し入社を決めた石井食品は老舗の食品メーカーである。稀有な企業哲学を持つ、素敵な会社だという

石井食品は創業80年を超える食品メーカーです。主力商品はミートボールやハンバーグで、その他にも季節の食材を使った製品等、様々な商品を販売していて昔からの根強いファンも多い会社です。創業以来、何度か会社の方向性を大きく転換してきた中で、2000年には無添加調理へのシフトも図り、会社の大きな特徴の一つとなっています。

その中でも最も大きな特徴の一つに、2015年頃から取組み始めた農業生産者と双方の利益を追求する取組みがあります。どうしても食品メーカーは、生産者より強い立場で価格交渉等を行うのが業界の慣例なんですが、あくまで生産者とは対等な立場で、時に協働して商品開発を行ったりもしています。このような姿勢で生産者と接する食品メーカーは、ほとんど聞いたことがありません。

このような石井食品で村上氏が現在務めるのは、経理部のマネージャー、並びに社長直下の経営分析チームとしての役割である。重要なポジションを担う大変さは感じながらも、転職前には感じられなかった人生の充実感を持っているという

現在は経理部のマネージャーとしてチームを率いていまして、具体的には全社PL予算の策定・管理やIR対応等を行っています。担当領域としてはこれに加えて、社長直下で経営の最重要課題を検討、実行していく役割も担っています。幅広く手掛けていることもあり仕事はそれなりに大変ですが、人生が充実していると感じています

入社してから3年が経ちますが、その時々で経営の優先課題は変わるので毎月取組む業務は異なります。更に経営に近い立場で取り組むので、大企業でよく言われる歯車の一部、という感覚とは対極にいると感じています。また仕事に本気で取り組むことができている点だけでなく、ベースで会社の想いと自分の考えが一致している感覚があり、安心して目の前の仕事に本気で取り組める、ということも充実感に繋がっています。農業生産者の課題解決を担うという、所謂ソーシャルグッドな想いを会社と共有している点は、とても大切なポイントだと思います。

あえて1つ印象に残っている業務を上げると、入社直後の営業会議立上げの取組は印象的でした。過去に営業の進捗状況をフォローする会議体は無く、取締役や営業拠点長との議論をリードして、PDCAのサイクルを作り上げました。実際ここでの取組が功を奏し業績が好転したこと、また何より社内の多くの人から「ありがとう」と感謝の言葉を貰ったことが嬉しかったです。それ以降もこの会社では心のこもった感謝が飛び交っているんですが、仕事の充実感を覚えた取組みでした。

村上氏に今後について聞いてみると、引続き”今”を真剣に生きるという強い言葉が返ってきた。そしてソーシャルグッドな転職に関心を持つ方々に向けて、自身の経験も基にメッセージをくれた

今後についてはあまり考えていないんです(笑)。
良くも悪くも、この会社での仕事はとても充実していて、今を真剣に生きていると思います。しばらくはこの会社で真剣に仕事へ取組みたいと思っていて、そのまま数十年経っているかもしれないし、もし別のチャレンジがしたいと思った時は、他のことをしているかもしれません。

ソーシャルグッドな転職に興味がある方に対して、私がメッセージを送ることができるとしたら、現場の人と泥まみれになって取り組むことの重要性と、年収に関しての少しの影響を許容する姿勢かもしれません。

私自身、農業というテーマでソーシャルグッドな領域に関心を持ち仕事に取組んでいますが、実際にこれらの課題解決を図ることができている場面というのは、泥臭く現場の人と一緒になって邁進している時で、これが抜け落ちると課題解決はできないと思っています。かっこいいスライドだけ作っても社会課題は解決しないんです。

またこれができると人生の充実度はとても上がっていて、この為に初期的には年収が少し低下してしまうことは、許容する必要があるのかもしれないと思っています。但し実際に低減すると言っても、生活に困らない水準の年収は担保することが現実にできるし、自身の人生の充実度と天秤にかけて真剣に考えると、ソーシャルグッドに重心を掛ける方が人生が充実する人は多いのではないでしょうか。


【社長より一言】ソーシャルグッド志向の人材採用が企業に与えるインパクト

石井食品社長・石井智康氏のコメント
村上さんは入社以来、様々な無理難題に挑んで頂いています。幅広い課題に何でも挑み、突破して頂いているので、銀行員の方ってこんな事もできるんだと驚いています。

特に、弊社の弱かったファイナンスや経営管理を、ものすごい勢いで強化してくれて助かりました。製造や営業のメンバーにもリスペクトを持ちながらディスカッションをしているので、他部門からの信頼も厚い人材です。従来のメンバーとシナジーを起こしながら、会社を変革してくれていて、大変心強いです。

(村上氏インタビュー 加藤和 / 石井智康氏インタビュー 高藤悠子)


企画・編集:プロビティ・グローバルサーチ株式会社/ソーシャルグッドキャリア研究所

ソーシャルグッド志向の転職に特化したキャリア支援サービス「ソーシャルグッド キャリアプラットフォーム」を運営するほか、社会への想いを持ったキャリア構築のノウハウ・事例を紹介する「ソーシャルグッドキャリア研究所を展開。



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