見出し画像

新パーパスと新バリュー、その後。「浸透には時間がかかる。だからこそ、諦めずに伝播させていく」

設立15周年を機に、パーパスとバリューを刷新したピラミッドフィルム クアドラ(以下:クアドラ)。社内外への発表から半年が経ったいま、このプロジェクトはどのような局面を迎えているのでしょうか。代表取締役社長の篠原哲也に、現在地と今後の展望を聞きました。

篠原哲也(しのはらてつや)
代表取締役社長
1993年ANAでジェットエンジンのエンジニアを4年経験後、1997年ピラミッドフィルムにてデジタル制作部の立上げに参加。CD−ROMからインターネット黎明期を経験し、企業のプロモーションサイトやISPでネットサービスの企画・制作・運営を担当する。2002年 ソニーにてデジタルデバイス(VAIO等)の情報配信サービス企画・営業であるビジネスプロデューサーを担当。2007年ピラミッドフィルム クアドラの設立に参加し、プロデューサーとして従事。2010年取締役副社長、2019年代表取締役社長に就任。


パーパスとバリューが示すもの

 ━━まずは前段として、新しいパーパスとバリューの存在意義をあらためて整理したいと思います。この2つは、どのような目的から刷新されたのでしょうか。

昨年までも、ビジョン・ミッション・バリューといったものは設定されていました。しかし、役員陣だけでつくった言葉だったからなのか、現場にあまり親近感がなく……自分事化しにくいという課題を抱えていました。そこで「これからの私たちが大切にしたい価値観は何か?」という議論を重ね、多くの社員たちの声を反映して策定したのが、新しいパーパスとバリューです。自画自賛じゃないですが、我々が目指すべきものをよく表しているし、迷ったときには何度も読み返してもらいたいと思える言葉ができました。

━━パーパスは、具体的に何を示していますか?

個人の成長なくして会社は成長しないという前提を踏まえ、「クアドラで、みんながどんなかたちで仕事をしていくか」を簡潔にまとめています。

「純粋な好奇心」とは、湧き出してくるポジティブな感情。「ああしてみよう」「こうしたらもっと面白くなるんじゃないか」「今より便利なものをつくろう」といった好奇心は、ものづくりをしていくうえでの原点です。こうした感情そのものが好きで仕事をしているという状態が、クアドラに在籍する社員の必要条件だと考えています。

そこに掛け合わせるのが、一人ひとりの持つ個性や技術といった「才能」。すべての業務に好奇心を持ち、自分を高めるために日々努力する。そして、成長を実感しながら、自分がやり遂げた達成感をやりがいに変えて、さらに「新しい出来る」を作るために、次の課題にチャレンジしていく。その積み重ねで、人も会社も成長し、より高みを目指していけるようになると考えています。

そして「新しい出来る」のヒントは、さまざまなところに埋もれています。今までなかった「あったらいいな」と思うことを実現したり、クライアントが抱えるコミュニケーションの課題を解決したり、伝わりづらいことを少しでもわかりやすくするために工夫を凝らしたりなど、小さなことから大きなことまでたくさん。そのありとあらゆるところに「新しい出来る」を実現することが、クアドラの持つ価値であり、意義であると考えています。

━━では、バリューである「QUADRIVES」はどんな役割を持っていますか?

先ほどのパーパスを成し遂げていくためには、ここに集まる仲間たちのための共通の価値観が必要です。そこで行動指針として示したのが「QUADRIVES」。

各QUADRIVESの意味は、以下の通り。どこかで見かけるような画一的な表現ではなく、社員たちと共感できるオリジナルの言葉を選んだつもりです。

全員主人公
クリエイティブ魂は、いつも平等だ。肩書き・職種・年齢を超えて、ひとりひとりが仕事の中心に、ヒーロー・ヒロインになれる会社であろう。

クアドラに所属しているメンバーは、あらゆるポジションで重要な役割を担っています。ときには困難な場面に直面することもあるでしょう。しかし、それすらもサクセスストーリーの一部であると捉え、メンバーそれぞれが主人公として成長して職務をまっとうしていくことを期待しています。

やってみたい!という挑戦
はじめてのこと、前例がないことは誰だって怖い。けれど好奇心を止めずに、やってみたいという挑戦を大切にしよう。

クリエイティブの根源にあるのは、「やってみたい!」という気持ちです。心が折れそうなときでも、簡単に諦めないで、最後までやり抜く。そうやって挑戦する気持ちを全力でサポートしていきます。

頼れる空気
仕事を一人で抱え込む必要はない。一人に抱え込ませてもいけない。QUADRAはチーム。誰かに頼ってもいい空気が、みんなの安心につながるはずだ。

クアドラはチームです。困ったり悩んだりしたら身近にいるメンバーに相談してください。その一方で、自分が頼られる存在になることも大切です。そうした頼り頼られの相互関係を築くことによって、チームはより強くなっていくはず。

遊びも100%
趣味や遊びを、全力で大切にしよう。刺激をいっぱいもらうあなただからこそ、あなたにしかない個性やアイデアが生まれるはず。

これは「も」という接続助詞が大切だと考えています。ここには書かれていませんが、「(仕事も100%、)遊びも100%」という意味なんですね。仕事に全力で取り組むためには、プライベートの充実が欠かせません。家族やパートナーと一緒にゆったりしたり、趣味を思いっきり満喫したり。仕事を忘れる時間はとても大切です。そして、できればちょっとした遊び心を持って過ごしてほしい。それが個人の特徴となり、ゆくゆくは会社の個性になるので。

学び進化
変わりつづける時代だからこそ、時代の声に常に耳を傾け、貪欲に学びつづける姿勢を持とう。自分を更新することが、新しいものを生み出すことにつながるはずだ。

私たちはプロフェッショナルとして、常に学び、進化・成長し、1段上2段上を目指して行動することが大切です。また、実践においても学びは常で、特に失敗から学ぶ姿勢が重要なスキルになります。成長するために必要なスキルや考え、ノウハウを学び、お客さまに最善なクリエイティブワークを提供できるように“学び進化”していこう。そういった意味を込めました。

パーパスとQUADRIVESを、確かに浸透させていくために

 ━━そんなパーパスとQUADRIVESを設定して半年が経ち、いまはどのような状況ですか?

この言葉たちがクアドラのパラダイムシフトを託せるものになっている実感はあります。ただ、本質が真の意味で理解され、社内で浸透していくのは、ここからだなと。こういうものは、作って終わりじゃないですから。完成したときも、喜びより「この言葉をこれから掲げていかなくちゃいけないぞ」というプレッシャーのほうが大きかったです。今はまだ、プロジェクト全体の到達度で言えば20%くらい。ただ、一朝一夕でなんとかなるものではありません。じっくり時間をかけて取り組んでいきたいと考えています。

━━浸透を図るために、篠原さんご自身はどんな動きをされていますか。

全社員にメッセージを送る月次定例会で、ことあるごとにパーパスやQUADRIVESを絡めた話をするようにしています。「新しい出来る」を実現するための心構えや向き合い方、QUADRIVESの日常への取り入れ方など、アプローチはいろいろです。あまりに言いすぎて、みんな飽きているかもしれないですが……パーパスとQUADRIVESに基づいて行動することを徹底していくには、たぶんそれくらいがちょうどよくて。「しつこい」と思われる覚悟を持ちつつ、話し続けていこうと思っています。

━━会社としては、どのような取り組みで浸透を図っていますか。

入社してくるメンバーに贈る「QUADRA WELCOME KIT」は、クアドラらしい広め方のひとつですよね。会社への期待が高まる入社のタイミングで、まずしっかりとパーパスとQUADRIVESに触れてもらえるのは、とてもいいと思っています。トイレに社是を貼る会社があるように、クアドラらしいかたちで、これからもパーパスとQUADRIVESが“目につく”状態をつくり続けていきたいです。

また来季からは、パーパスとQUADRIVESに基づいた定性評価もはじまります。1年間、自分がどんな指針で行動していくかを定義して、自己評価する。そうすれば、否が応にもパーパスとQUADRIVESを内在化しなくてはいけない場面が増えるため、きっと理解は深まっていくと思います。また、採用の場面でも、QUADRIVESに沿った価値観を持っているかどうかを尋ねる質問を設けました。内容は随時調整が必要だと思っていますが、大きな基準になることは間違いありません。

そしてもうひとつ大切なのが「人から人へ伝播していく」浸透です。策定に携わったマネージャーたちがパーパスとQUADRIVESを体現していくことで、それを見ているメンバーたちも徐々に影響を受けていくでしょう。経験の浅いうちは実務を回すだけで精いっぱいかもしれませんが、働いていくうちに「クアドラの価値観はこういうことだったのか」とわかる場面も出てくると思います。

迷ったとき、悩んだとき、立ち返れるものになった

━━パーパスとQUADRIVESが刷新されてから、社内になにか変化は見られますか?

何か決断を下さないといけないけれど判断に迷う。こういう場面でパーパスとQUADRIVESに背中を押されることがあると聞きます。ある若手メンバーが会議で発言しようか迷ったそうなんですが、それに対してマネージャーから「全員が主人公なんだから、どんどん発言してもいいんだよ」とアドバイスがあり、その若手メンバーは臆さず意見を言ってもいいんだと認識が変わったそう。実務のなかでパーパスやQUADRIVESの存在を実感するのはとても貴重なことなので、こういうきっかけを積み重ねながら会社全体の意識が変わっていくといいですよね。

━━浸透するのに時間がかかることだからこそ、日常で少しずつパーパスとQUADRIVESの存在感が増していくのはうれしいことですね。

このまま理解が進んでいけば、クアドラは今以上に個人が成長を実感できる、働き甲斐のある会社になるでしょう。そして、それは働きやすさや会社の成長につながっていくものです。本業を抱えながらこのプロジェクトを風化させないようにするためには、それなりの労力がかかりますが、少しずつでも前に進んでいけるように継続することが必要だと思っています。

とはいえ、この言葉自体が設立15年経ってはじめてつくられたものだから、5年後、10年後どうなっているのかは正直わかりません。理想は、この言葉に共感した社員が長く働き続けてくれて、次の世代に伝承していくようなサイクルができること。とにかく、クアドラが次のステップに進むために、このパーパスとQUADRIVESが大きなカギを握っていると思います。

取材・文:菅原さくら

(この記事の内容は2023年2月7日時点での情報です)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?