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はるか奥様のストーリー①

水曜の夕方、街行く人の傘の花が咲く道を歩ていく。
車道をゆく白いワゴンのタイヤが、不意に水たまりを踏んだ。
ぱしゃり。避ける暇もなく、革靴の先へ水がかかる。冷たい。
「勘弁しろよ……」
情けない声が唇から出た。
脚を棒にしての外回りの帰り。小さいアンラッキーを流せない。
このご時世、わが社も製品を値上げせざるを得ないがー。
渋る大手の問屋を相手に、ノルマ分を押し込むのは、骨が折れる。
思惑とは逆に、値下げを求めてくる、先方の部長の渋面を思い出す。
どこも利益が減っている。必死なのだ。
営業の仕事を始めて、30年近く経った。
門前払い続出だった、10年前のリーマンショックの悪夢よりはマシだがー。
交渉が難航するのは、じゅうぶん予想ができる。
疲れが見える部下たちも励まし、結果につなげなければならない。
やるべきことはわかるが、心身が追い付かない。
こういうときはー。
(エロいねーちゃんで発散して、乗り越えてなんぼだろ……)
スマホ片手に、店を検索し始める俺だった……。

娘の大学受験も近い。予算は、ホテル代を入れても限られる。
(包み込んでくれる女……自分から動いてくれそうな……)
視線は、アラサーのキャストを求めて、サイトからサイトを渡り歩く。
そして、1人の女性に、目が留まった。
(はるかさん……28歳? 清楚なのに痴女……どんなんだ)
写真のFカップのバストに眼を奪われた俺は、店に電話を掛けた。

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