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内緒の関係 のどか奥様のストーリー⑭

帰したくない。
女の子に対してそう思ってしまったのは初めてだ。彼女が迎えの車に乗り込むまで、俺はずっとその瞳を見つめていた。
「それじゃ…またね、のどかさん。近いうちにまた遊びに来てくれると嬉しい」
「ほんとに?私もまだ会いたいなって思ってました」
 あまり運転手を待たせてはいけないだろうと思い手短な別れとなってしまったが、その言葉は本心だ。のどかさんも嬉しそうに笑って頷いてくれた。最後にもう一度ぎゅっと抱きしめ、繋いでいた手を離す。まだ彼女の熱を持ったままの体温が心地よく、俺は曇天にも負けないほど明るい気持ちで家路についたのだった。これで雨の日ももう憂鬱ではない。スケジュールさえ合っていれば、またあの太陽みたいな彼女に会えるのだから。

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