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- 入院3日目 - 閉鎖病棟の1日

6:00
起床。廊下と病室の電気がついて、患者が動き始める。共同の洗面所でめいめい顔を洗い、ひげを剃る。ホールのテレビがつく。

7:40
朝食。給食室から大きなワゴンに積まれた食事が運ばれてくる。ナースに名前を呼ばれ、自分のトレーを受けとる。食事は薄味だけど、質素な感じはしない。心配なのは、病棟から一歩も出られず運動もできないのに毎回白米が200gも出てくること。エネルギーをとりすぎないようにご飯は半分残す。食べ終わったら服薬の時間。ナースに自分の名前を名乗り、その場でカプセルを飲みくだす。

8:30
始業のベル(キーンコーンカーンコーン)。ナースステーションで夜勤ナースから日勤ナースへ申し送りが行われる。患者は歯を磨いたり、トイレに行ったり、ホールのテレビでニュースを見たりする。

9:00
清掃スタッフが廊下、洗面所、病室の床をワイパーで拭いていく。スタッフは南米出身らしい女性。ピンクのシャツ、ベージュのパンツ、イヤリング。カールした髪をカチューシャでまとめている。流暢な日本語でわたしたち一人ひとりとアイコンタクトをとりながら、手際よく仕事を進めていく。外国の人に特有のすてきな匂いがする。香水のような、柔軟剤のような香り。前後してナースが除菌シートでベッドまわりを拭いていく。

10:00
ナースが病室をまわって健康チェック。体温と血圧を測り、排尿・排便回数、症状の変化について尋ねる。データ入力のためのノートパソコンなんていう最新機器はここにはないので、ナースは観察したことを手元のメモ用紙に走り書きする。

11:50
昼食。

14:00
ラジオ体操と作業療法の時間。作業療法士が見守るなか、パズル、ぬり絵、数独、読書(雑誌、小説、料理本、旅行本)から好きなものを選んで、1時間作業に没頭する。

15:00
ドクターの回診。この日は薬剤師さんがふらっと顔を出した。トリプタノールを減らす方針であること(これが悪さ=希死念慮を起こしている可能性がある)、入院後に飲み始めた薬の効果について、今後予定されている心理検査や医師の診断をふまえて処方を考えていくことを伝えられた。

16:00
夕方の検温。

17:00
夜勤のナースが「夜勤でーす」と病室をまわってあいさつをしていく。

17:50
夕食。食べ終わったら、ラッシュアワーを避けて洗面所で歯みがきと洗顔。夜勤ナースから着替えの下着とパジャマをもらう。ここから20時まではロビーに置かれた本を読んだり、明日の作戦を立てたりして過ごす。この作戦が意外と重要なんだ。とりわけ翌日が入浴日の場合は(わたしは週に2日しか入浴できない)。朝9時前にナースステーションで財布を借り、公衆電話から母に電話をかけて洗濯物をとりにきてほしいと伝え、いざ入浴となったら浴室の個人ロッカーに洗濯物を入れ、入れ替わりに新しい下着やタオルなど必要なものを過不足なく運び出し、ナースステーションでドライヤーと鏡とメイクポーチを借りるまでの算段を立てる。入浴は至福の時間だけれど、かなりの気苦労を要する神経戦だ。こんな戦いが不要になる日が早くきてほしい。

20:00
就寝前の服薬。ナースステーションで名前を名乗る。ナースがその場で薬の入った袋を開封し、わたしの手のひらに錠剤をのせる。それをナースの目の前で飲みくだす(夜は薬の数が多いから飲み込むのに苦労する)。病室に戻り、白湯を飲みながら(お湯は蛇口からいつでも汲める)本を読んで過ごす。

21:00
就寝。ホールのテレビが消され、廊下と病室の明かりが落とされる。

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