見出し画像

どうも、妻に稼いでもらえてる夫です【読書感想文】

最近読んで面白かった本を紹介する。
今回は小西一禎『妻に稼がれる夫のジレンマ』


きっかけ&動機

日経新聞の書評にて知った。
妻に稼がれる夫の一人として読んでみたかった。

どんな本?

妻の海外転勤に同行すべく会社を退職 or 休職し、家事と育児に専念する主夫へと転身した男性たちの話。妻を支えるために仕事を離れた男性の葛藤や悩みが赤裸々に綴られている。

駐在員の夫として暮らす「駐夫」や妻よりも年収が低い「稼がれる夫」たちへのインタビューを通して、性別役割意識やキャリア形成を考える本。

感想

面白いほどに共感できない!

収入、キャリア、世間体の喪失を嘆く男性が多く登場した。日本的雇用慣行の悪しき遺物「ジェンダー規範(男は仕事、女は家庭)」は根深い。稼ぎこそが男性の価値であると信じる人にとって、稼得能力の喪失は相当なコンプレックスなのか。

私は「主夫」であり「妻に稼がれる男」でもある。当書に登場する夫たちとは状況が近い。しかし、夫たちの考えには共感できず、違う文化圏に暮らす人のインタビューを読んでいるような気持ちになった。

例えば、妻に年収を抜かれた30代夫の談話↓

妻は、自分の最も身近にいる同世代です。やっぱり、そういう人と自分を比べた時に、焦るっていう気持ちがない人は、まず、いないんじゃないかと思います。

小西一禎『妻に稼がれる夫のジレンマ』

彼は妻を良きライバルと称していた。まぁ、そういう人もいるだろう。しかし「妻より稼げない男性は焦って当然」との意見には驚きを隠せない。私は焦りを感じたことがない。

焦る彼と、焦らない私は何が違うのか。

私が「社会人(彼女)&学生(私)カップル」を経て結婚したから、パートナーよりも年収が低いことに慣れているのか。私の会社員経験が短く仕事へのプライドが低いからなのか。そもそも、根本的な価値観が違うのか。

稼げない男は格好悪い?

同じく、妻に年収を抜かれた30代夫の談話↓

あまりにも妻に依存する状態っていうのは、危険だと思いますし、格好悪いじゃないですか、シンプルに妻との関係で。世間体とかじゃないんです。

小西一禎『妻に稼がれる夫のジレンマ』

妻に依存する状態が危険なのはその通り。しかし、格好悪いと思ったことはない。「世間体云々ではなく、妻に対して格好がつかない」という感覚に驚いた。

私は妻との関係性において「格好良さ」という尺度を意識したことがない。妻と出会い、交際を経て、今に至るまで「格好悪さ」を排したことも「格好良さ」を演出したこともない。ありのままをさらけ出せない関係は鬱陶しいし、面倒臭い。格好つけてまで誰かと一緒にいたいとは思わない。

「格好良い夫」として振る舞うか、ありのままをさらけ出すか。この美意識の違いが「焦るか、焦らないか」にも影響していそう。

〇〇らしさ、への無関心

「男らしさ」にこだわらなければ、この本に登場する葛藤や悩みは解決する。それでも「男らしさ」を捨てられない人が相当数いるようだ。

男らしさに限らず「〇〇らしさ」にはこだわらない方が良いと考えている。「らしさ」なんてものは、管理する側にとって都合が良いので喧伝されているに過ぎない。

学校で「高学年らしく」とか「〇〇中学校らしく」と言われてきたが、学生が〇〇らしく振る舞うことで先生が管理しやすくなるだけの話。

価値ある人間にならなくても良い

稼得能力以外にも目を向けて、硬直化している男性の評価軸を改めるのも確かに重要だろう。

より重要なのは「評価されなくても幸せになれる能力」だと思う。評価軸を改めるのではなく、そもそも評価を求めない方が即効性がある。

社会的な評価軸を個人の力で変えるのは難しいし、変わるとしても時間がかかる。ならば、周囲からの評価を求めずにひたすら自己満足を追求する方がコスパが良い気がする。

あとがき:稼がれる?稼がせる?

「妻に稼がる夫」と「妻に稼がる夫」ではかなり印象が違う。

「妻に稼がる夫」は「妻にしてやられた」という夫側の被害者意識を感じる。
「妻に稼がる夫」はヒモ男のような印象を受ける。どちらかと言うと妻が被害者だろうか。

どちらも「妻は稼ぎ、夫は稼がない」という事実は同じだが、その事実をどう捉えるかで表現も変わってきそう。

男女を入れ替えてみる。
「夫に稼がる妻」は大量にいそう。硬直的な性別役割意識のもとにキャリアを断念した女性は多くいるだろう。
「夫に稼がる妻」はネットでよく目にする専業主婦アンチの言葉遣いに近い感じがする。

私は妻のためにキャリアを断念したわけではない。
ましてや、妻に無理強いをして稼がせているわけでもない。

「(なんか知らんけど)妻に稼いでもらえてる夫」だ。

この記事が参加している募集

ブログのサーバ費に充てさせていただきます。