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資本主義は止まれない【読書感想文】

最近読んで面白かった本を紹介する。
今回は長沼伸一郎『現代経済学の直観的方法』


きっかけ

とあるnoteの記事で紹介されていた。経済に疎い理系に向けて書かれた本と知り興味を持った。

どんな本?

秀逸な例え話で経済を解説してくれる本。堅苦しい用語や理論を抜きに、タイトル通り「直感的に」経済を学べる。イラストを用いて丁寧に解説してくるので「置いていかれた感」もない。経済を学びたいが、いざ経済解説書を手に取ると飽き飽きしてしまう人にオススメ。

当書のテーマは「行き過ぎた資本主義経済との付き合い方」を考えることにある。全9章からなるが、虫食い読みをしても楽しめる構成にしているそうだ。インフレとデフレ、自由貿易と保護貿易、仮想通貨とブロックチェーンなど興味をそそるトピックスが並ぶ。資本主義について考えたい人はもちろん、経済の一分野の入門書としても使える。

感想

資本主義は止まれない

「飽くなき成長」を求めず「現状維持」で満足できないものか、と資本主義に辟易していた。しかし、資本主義は原理上、加速を続けるか墜落するかの二択しかないようだ。停滞、あるいは軟着陸ができれば最高だが、かなり難しいことがわかった。

平和な農業社会には戻れない

環境破壊や格差が悪化し続ける昨今、どうしても「平和な農業社会」に惹かれてしまう。日常生活に必要な物品は自国で生産し、過剰な利益を追求しない社会。やはり、競争疲れした現代人には魅力的に映る。

しかし、資本主義経済では商工業がリーダーとなり、農業は隅に追いやられる。これは産業としての機動力に原因があるようだ。農業は「ほぼ固定された需要」と「増え続ける供給」という性質ゆえに機動力を高められない。資本主義が止まれない以上、農業社会に戻ることはないかもしれない。

資本主義国、日本

なぜ、日本は資本主義国になったのか。著者によると、資本主義により力を増した列強から身を守るために資本主義を導入したらしい。日本は消極的に資本主義を導入したのかもしれない。

かつての日本は牧歌的な農業社会を捨て、資本主義国へ転向した。もしも日本が農業社会を貫いていたら、格差や環境が悪化しなかったのではないかと思わざるを得ない。

しかし、仮に農業社会を捨てていなくても、結局は列強の植民地として資本主義国にされたと考えれば諦めがつく。それだけ資本主義は「止まれない」ものなのか。

個人としてどう付き合うか

「資本主義は行き過ぎている!」と叫んでも、資本主義を止めるのは難しい。ましてや、個人レベルで太刀打ちできる問題ではない。

「行き過ぎ問題」はひとまず保存(放棄ではなく)しておき、まずは個人として資本主義の負の影響から身を守るのが得策に思えてくる。たとえば、次のような行動目標が考えられる。

  • 足るを知る

  • 企業に不足感を煽られて不要な消費をしない

  • 見せびらかすための消費をしない

  • 「成長せねば!」との焦りを抱かない

  • 人的資本(稼ぐこと)に捉われ過ぎない

  • 金融資産や社会資本にも目を向ける

金融資産、人的資本、社会資本については別の本(橘玲『幸福の資本論』)の話だが繋がりはありそう。詳細は割愛するが、橘氏は「金融資産、人的資本、社会資本をインプットし、ある変換効率で変換されてアウトプットされたものが幸福」と説明している。

個人としての資本主義との付き合い方は、自分の中でもまだ答えが出ていない。引き続き、考えていきたい。

まとめ

取っ付きにくい「経済」をすっきりと解説してくれる良書だった。私は本を所有しない主義(基本は図書館。買っても読後に売却する)だが「この本は所有してたまに読み返したい」と思った。日経新聞を読む際の相棒にしようか悩んでいる。

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