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ペットフードの選び方 前編

はじめに

僕がnoteで連載している「ペットフード会社に25年以上勤めた獣医師のペットフード講座」の本編(月額マガジン)では、ペットフードやねこさん・わんちゃんの健康について詳しく解説しています。
(できれば本編の前にこちらの無料記事をご覧ください。)

それとは別に番外編として、「ペットフード基本の『き』」と題して、シリーズでペットフードについての基本的なこと、例えば「ペットフードの選び方」や「ペットフードの保存のしかた」などを、できるだけわかりやすく解説していこうと思っています。

その「ペットフード基本の『き』」の第1回では、「ペットフードの選び方」について解説します。

というのも、ペットフードにはあまりに多くの種類があって、「どのフードを選んでいいかよくわからない」という飼い主さんが少なからずいらっしゃるのではないかと思うからです。とくに、ねこさん・わんちゃんと一緒に暮らし始めたばかりの飼い主さんにとっては難題のひとつだろうと思うのです。

そこで今回は、ペットフードを選ぶときにまず押さえておいてもらいたい、ペットフード選びの基本の『き』についてお話します。

前提として、今回は毎日のごはん(主食)として、ねこさん・わんちゃんにあげるフードをとりあげます。おやつについてはここでは、詳しくは触れません。


あなたは 何のために ペットフード選びをするのですか?

この記事を読んでくれている方は、多かれ少なかれペットフード選びに興味やお悩みをお持ちだと思います。
そこでまず最初に、ペットフード選びで何よりも重要なことをお話します。

それは、
「自分は、何のために、ペットフードを選ぼうとしているのだろう?」ということを忘れないことです。
いささか抽象的な言いかたになってしまって申し訳ありません。これは言いかえると「ペットフードを選ぶことの目的をはっきりさせておく」ということであり、さらに言うと「そもそも、ペットフードは何のために存在しているのか?」ということでもあります。

ついつい勘違いをしがち、というよりは、勘違いを”させられがち”なのですが、本来、ごはん(主食)としてのペットフードは、あくまでも「ねこさん・わんちゃんをできるかぎり健康にするための手段・ツール」として存在しています(もちろん、ねこさん・わんちゃん用のおやつなどは別です)。
ですから、「どれだけよいツールを使うか」よりも、「そのツールを使うと、どれだけよい結果が得られるか」のほうがはるかに大切です。

これは、いきなり言われても、にわかには腹落ちしずらいだろうと思います。ですので、このことは「ペットフード会社に25年以上勤めた獣医師のペットフード講座」の本編で、じっくりと時間をかけてお話をしていきます。

いまのところはひとまず、「そんなものなのかな」くらいで頭の片隅に置いておいてもらえるとありがたいです。


「総合栄養食」ってどんなフードなんだろう?

前置きが長くなりましたが、ここから先ほど書いた通り、「ツールとしてのペットフード選び」の基本について解説していきます。

ペットフードは、どういう目的でねこさん・わんちゃんにあげるのかによって、フードの設計や中身がまるで違います。ですから目的に合ったフードを選ぶようにしてください。
ペットフード協会では、ペットフードを目的別に次のように分類しています。

  1. 総合栄養食
    ごはん(主食)とするためのフードです。このあとで詳しく解説します。

  2. 間食
    おやつのことです。

  3. 療法食
    病気などの治療補助のためのフードです。

  4. その他の目的食
    フードをよりおいしくするためにトッピングとして使うものや、サプリメントなどが含まれます。

これらは、ペットフード協会の会員になっている会社の製品には、かならずどこかに書かれていますから、フードのパッケージをよく見てみてくださいね。

逆に言えば、ペットフード協会の会員になっていない会社は、これらの規約にしたがう必要はありません。そういう意味では、ペットフード協会の会員になっている会社の製品のほうが、いろいろな規約に則って販売されているぶん、安心できると思います。
ただし、そもそもペットフードにかかわる法律がいくつもあって、それらはすべてのペットフード会社が守らなければなりません。だって法律ですから。

それを踏まえて、まず、ねこさん・わんちゃんに「毎日のごはん(主食)」としてあげるフードは、かならず「総合栄養食」を選んでください
総合栄養食は、ペットフード協会によって次のように定義されています。

「総合栄養食」とは、ペットフードのうち、犬又は猫に毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフードと水だけで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養素的にバランスのとれた製品であって「ペットフード公正取引協議会」の定める試験の結果を基に定められています。ペットフードの目的として「総合栄養食」と表示をする場合は、そのペットフードが適用となる犬又は猫の成長段階が併記されています。「総合栄養食」と表示をするためには、各事業者が自らの責任において定められた試験を行わなければなりません。
1つは、製品の分析試験の結果を施行規則の栄養基準と比較し、栄養成分の基準に合致しているかを証明する「分析試験」。もう1つは、実際に給与試験を行って総合栄養食であると証明する「給与試験」。この2つの試験により証明されています。

ペットフード協会HPより https://petfood.or.jp/knowledge/kind/index.html

要点だけを書き出すと

  • 毎日のごはん(主食)としてあげることが目的

  • そのフードと水だけで健康を維持できるように栄養バランスがとれている

  • 各成長段階ごとに基準がある

  • ペットフードメーカーは2つの試験(分析試験・給与試験)のうち、どちらかをおこなって、基準を満たしていることを証明する必要がある

ということですね。一見あたりまえのことのように感じられるかもしれませが、とても大事なことです。
おそらく多くの飼い主さんが勘違いをしているであろうことを、あとでお話するのですが、それとも関係することですので、後ほど読み返してみてください。

「総合栄養食」には成長段階ごとに基準がある

ねこさん・わんちゃんには、「妊娠期/授乳期」「成長期」「成猫期・成犬期」の成長段階(ライフステージともいいます)があり、その成長段階によって必要な栄養バランスが違います。ヒトでも赤ちゃんと高齢の方では必要な栄養が違いますよね。

これもペットフード協会によって次のように定義されています。(一部抜粋)

犬・猫は、下記の成長段階に合わせたフードを選択する必要があります。また、前述した通り、「総合栄養食」と表示をする場合は、そのペットフードが適用となる犬又は猫の成長段階の併記が必要であることが「ペットフードの表示に関する公正競争規約・施行規則」で求められています。「施行規則」に定められている成長段階は栄養要求量の高い順に
①:「妊娠期/授乳期」
②:「幼犬期・幼猫期/成長期又はグロース」
③:「成犬期・成猫期/維持期又はメンテナンス」
④:①~③まですべてを満たす場合は「全成長段階/又はオールステージ」
と分類されています。

ペットフード協会HPより https://petfood.or.jp/knowledge/kind/index.html

これにしたがって、総合栄養食にはどの成長段階のねこさん・わんちゃん用なのかも書かれています。
例えば「子猫用 総合栄養食」や「成犬用 総合栄養食」などです。
(いわゆる「シニア期」ついてはとくに決まりはありません。ペットフード協会の分類では「シニア期」は「成犬期・成猫期」に含まれます。)

ここで気をつけてもらいたいのが定義の④です。
『①~③まですべてを満たす場合は「全成長段階/又はオールステージ」』となっています。(これは、「そのように表示してもよい」という意味です。)
栄養要求量(必要な栄養の量こと)が高い順に①~③で、そのすべてを満たす場合は④と表示してもよい、ということは、④に該当するのは、実質的には「妊娠期/授乳期」用のフードだということです。
これは、本来そのフードの適用である妊娠期/授乳期のねこさん・わんちゃん以外にとっては、成長期の子ネコ・子イヌであっても、栄養過剰になってしまいます。とくにシニア期のねこさん・わんちゃんにあげることは、まったくおすすめできません。
「オールステージ」や「全年齢対応」とうたっているフードは、「何歳の子でも大丈夫なすごいフード」ではないのだと知っておいてください。


「一般食」には要注意!(後編に続く)

いささかまぎらわしいのですが、「一般食」は「総合栄養食」とは別物ですから注意してください。

このことについて、もっと解説したいのですが、自分が思っていた以上に長くなってしまいましたので、この続きは来週に公開する「ペットフード基本の『き』 ペットフードの選び方 後編」で詳しく解説します。
(後編はこちら

それでは、「ペットフード基本の『き』 ペットフードの選び方 後編」をお楽しみに!

  

後編の目次

後編のはじめに

「一般食」には要注意!(続き)

で、どのフードを選べばいいの?

 1.「総合栄養食」を選ぶ

 2.使い続けられるフードを選ぶ

 3.ペットフードの「原材料・添加物」は気にする必要なし


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