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世界のスタートアップスタジオ事例(3) Founders Factory | 客員起業家の活用

Founders Factory

おそらく日本で最も海外のスタートアップスタジオをスタディしている筆者。日々メモっている各社のトピックや特徴に関して皆さんと共有していく「世界のスタートアップスタジオ事例」シリーズです。今回はFounders Factory。早速みていきましょう。

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かわいいデザイン。このタグライン、アフリカのことわざ“If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.”を連想させます。恐らくその通りで、スタートアップスタジオが起業家と連携して共創する意義を表現しているのだと思案します。

さて、Founders Factoryはロンドンに本拠地を構え、その他ブカレストやパリを含むEUを中心に事業展開します。彼らはスタートアップスタジオであり且つコーポレートアクセラレーターにも取り組んでいるため大企業とのネットワークが強いです。昨年はJohnson&Johnson Innovationとパートナーシップを組んでNYにも進出しました。

「Founder in Residence」とは何か

筆者の中ではEUで最もEiR(Entrepreneur in Residence)を活用しているという印象です。日本語だと「客員起業家制度」と訳されることが多いこの手法。彼らはEiRではなくFiR(Founder in Residence)という言葉を用いていますが内容は同じです。採用ページを見ると、原稿を書いている時点(2020年7月上旬)では以下のようなプロジェクトが進行し、FiRを募集しています。

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Entrepreneur in Residence(Founder in Residence)と聞いて「?」となった方もいるかもしれないので、もしくは、聞いたことはあるがJob Descriptionを見たことがない方も多いと思いますので、この機に事例をご紹介します。一定期間住み込んで芸術作品を創造する「Artist in Residence」の起業家版だと置き換えるとわかりやすいかもです。例えばこちら。

「Founder in Residence, CEO (Project Spencer)」のJob Description

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詳細は割愛しますがFounders Factoryは、ブランドと小売店を繋ぐマーケットプレイスを立ち上げようと考えていると。そのプロジェクトコードが「Spencer」。プロジェクトという表現は、まだアイデア段階で会社化していないためですね。Roleにエッセンスが凝縮されているので和訳しながら説明すると、

「Founder in Residence」の役割と対価

“We’re looking for a Founder in Residence, CEO to lead Project Spencer, and the business that it becomes. “

↑ Founders Factoryは本プロジェクトをリードする「Founder in Residence, CEO」を探しているとある通り、検証後には会社化することが前提となっていて、つまりはFiRは会社化後のCEOであるということ。

“As Founder in Residence, you will establish the overarching vision, develop the marketplace, the product functionality, go-to-market strategy and attract a world-class founding team around you. “

↑ FiRが担う職務は、事業ビジョンの定義、プロダクトの開発、営業/マーケ戦略、チーム組成と、要はもうこのプロダクトを成功させるためのPre-CEOとして全ての業務をという話です。

After Project Spencer’s incubation period, you will become the CEO of the newly created business as it spins out of our incubator and joins our accelerator programme. You’ll have £250K funding as well as twelve months of operational support from Founders Factory. 

↑ インキュベーション期間終了後、要は合意した検証内容がクリアできた際には、スピンオフし会社化したCEOとなり、創業から12ヶ月の会社運営サポートと£250Kの出資が受けられるという内容です。

というわけで、イメージつきましたでしょうか?連携する起業家の存在なしには、スタートアップスタジオが連続的にスタートアップを生み出すことは困難を極めるため、それを解決するのがこの仕組みというわけです。

Creator Fund(EU版Dorm Room Fundの立ち上げ)

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今年のFounders Factoryに関するトピックで興味深かったのは「Creator Fund」への出資を含む立ち上げサポートです。「Creator Fund」とはCambridgeやOxfordやImperial等を含むEUの大学生から成るVCで、要は自分の周りにいる学生起業家に対して学生VCが出資し成長を支援するものです。大学自体が学生起業を支援する仕組みはありますが、それとは別のアプローチですね。

お気づきの方は、あ、あれのEU版ねと感じたかと思いますが、アメリカで生まれた「Dorm Room Fund」をベンチマークにしています。

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FacebookやGoogleやSnapchatやYahooなどアメリカでは学生起業が多く、成功事例も出てきているように、EUでもその社会をつくりたいという志です。Founders Factoryは本拠地EUのスタジオの中で最もアクティブな一社なので、こうやって社会にインパクトを与える新しい取り組みに挑戦するリーダーシップが素敵だなと感じます。





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