【映画の中の詩】悪人と美女(1952)
冬の苺匙に圧(お)しをり別離よりつづきて永きわが独りの喪(も) 〈尾崎左永子〉
ヴィンセント・ミネリ監督のハリウッドの内幕物。
ウィキペディアによると「ビリー・ワイルダー監督の『サンセット大通り』、ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ監督の『イヴの総て』(いずれも1950年製作)と並ぶ著名な傑作」とのことですが、それほどでも・・・というのが個人的な感想です。
ジョージア・ロリソン(ラナ・ターナー)の亡父は名優として知られたハリウッドのスターでしたが、彼女自身は端役ばかりの売れない女優です。
彼女は自分自身への失望と愛憎入り交じる父への複雑な感情に苦しみ酒に溺れ、自殺未遂を繰り返していました。
映画を成功させるためには手段を選ばないプロデューサーのジョナサン・シールズ(カーク・ダグラス)はそんなジョージアの境遇に目をつけ、彼女をスター女優に仕立て上げようとします。
父の遺影や遺品を祭壇のように飾る部屋に閉じこもるジョージアを独り立ちして世の中に出て行かせようとするシーン。
冒頭の歌は尾崎左永子(松田さえこ)の第一歌集『さるびあ街』(1957)に収められている印象的な一首。
このシーンとセリフでこの一首が私の頭に浮かんだのでした。
シェイクスピア『マクベス』よりの引用は「Tomorrow Speech」と呼ばれる有名な一節。
参考リンク
『さるびあ街 : 松田さえこ歌集』 https://dl.ndl.go.jp/pid/1344803/1/86
『新修シェークスピヤ全集 第29巻 (マクベス)』坪内逍遥 訳
https://dl.ndl.go.jp/pid/1237640/1/112
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