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物語【絶望への秒読み】第十話

家族全員で食べる最後の食事になるかも知れない。僕はそんなことを考え、食事があまり喉を通らなかった。


「おい太洋、全然食べてないじゃないか。最後の晩餐になるかも知れないんだぞ。母さんの手料理もしばらく食えないぞ。」父さんはデリカシーがない。最後の晩餐。思っていても普通は口にしない。


「最後になんてなるもんですか!ねぇみんな!」母さんが父さんの頭を叩きながら言った。父さんは頬張っていた唐揚げを吐き出す。


汚ねぇ!僕がそう言って飛んできた唐揚げを避けると皆んなが笑った。



食事が終わると父さんと伊賀咲のおじさんは、シェルターの確認だと言って地下に降りて行った。


母さんは食事のあとかたづけ、手伝うと言った夏陽を「いいよ。久しぶりだから太洋と話でもしてて。」とひとりでキッチンに行ってしまった。


リビングには僕と夏陽の二人きり。気まずい空気が流れる。


「ほんとこの感じひさしぶり。」夏陽が最初に話始めた。


あぁ。大変なことになったけど。


「最初はびっくりしたけど。太洋のお父さん、やっぱり面白いね。」


そう?うちの父さんはデリカシーないよ。さっきだって最後の晩餐とか普通言わないでしょ。


「うちのお父さんマジメだから。」


おじさんは昔から変わらない。落ち着いていてカッコいいよ。


「なんか懐かしい。初めて会った時、私ぜんぜん喋れなくて、学校でもうまく馴染めなくて、仲間はずれとかいじめられたりとか。太洋にはたくさん助けてもらった。」


友達を助けるのなんて当たり前だろ。


「太洋の家族のおかげでだいぶ話せるようになって、友達もできたし、いまさらだけどありがとう。」


いや、ぜんぜんそんなの普通だろ。家族みたいなもんなんだから。



「よーし、大丈夫だろ。」しばらくすると、そう言いながら父さん達が戻ってきた



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