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物語【絶望への秒読み】第四話

共働きで忙しい両親の代わりに、僕の面倒をよくみてくれたおばあちゃん。

大好きなおばあちゃんが亡くなったのは、去年の夏のことだった。

最後は僕のことも分からなくなっていたけど、笑顔で手を握ってくれた。

僕の口からは自然と『ありがとう』という言葉がれていた。

覚悟はしていたのに、大好きな人との別れは本当に辛くて涙がとまらなかった。あとは悲しすぎてあまり覚えていない。


あれから1年。ヤバいことになったよ。おばあちゃん。


今日は仕事が休みで両親は家にいるはず。これだけ世間が騒いでいたら、普段はのんびりしている両親もさすがに焦っているだろう。


スマホは相変わらず繋がらない。


僕は急いで家に向かった。


夢なら早く覚めてくれ。

家に向かいながら何度もこの言葉を呟いた。世界の終わりなんてあり得ない。誰もが絶対思っていた。映画やゲームの世界じゃないんだから、現実に世界が滅ぶなんて、終末なんてありえない。


心から湧き上がる絶望感に苛まれながら、やっと目の前に我が家が見えてきた。


こんなに全力で走ったのは小学生の運動会の時以来か。おばあちゃんの声援はあの広いグラウンドでもよく聞こえてた。様々な思い出が頭の中で錯綜し意識が朦朧もうろうとする。




この辺りはサラリーマン世帯の多い地区であり、平日は閑散としている。

インドア派の両親は仕事が休みでもあまり出かけない。僕は震える手でなんとか鍵をこじ開け、靴も履いたまま家の中に入ろうとした。


その瞬間、いつものように「おかえり!」と言わんばかりに、愛犬の"パール"が鳴きながら飛びついて来た。



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