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「口当たりがよい」話の多さ

マネジャー職を少し経験したあとの話になる。一個人としての限界も見えたので、このタイミングで2つ書いてみようと思う。

「社員のために」という幻想

勤め先で仕事をコントロールし、その延長で従業員のマネジメントをしている方もいるだろう。従業員としては定期的に1on1が実施され、日常の業務で悩みがないかヒアリングもされていることと思う。そうした際、会社側がだいたい主張するのは「あなたのため」という内容だ。「あなたのため」にできることは、自助努力をうながすことや、評価を盾にこれまで以上に業務に邁進するようアドバイスするくらいだ。もう少し丁寧であれば、どう努力をするとよいとか、フィードバックを細かくしてくれるなど具体的であろう。しかし、たどってきたキャリアが異なるために、多くは参考にできない。会社はこうした流れを「社員のために」と謳うが、結果として根本の悩みは解決しない。時間をとったにもかかわらず解消されないのであればマネジャーも、そして相談を持ちかけた一般従業員もモヤモヤが残るだろう。それが実情だ。

自分を磨かないベテラン

(*…ここでの「ベテラン」は、日本の会社において自分よりも年齢が上だったり、役職が上であることを示す。)

マネジャー職になってからその類の本を何冊か読んだが、読んでいるうちの一節にこういったものがある。

そして、本物の幸せをつかんでほしい。そのために大切なことは自分を磨くことです。そして、仕事こそ私たちを磨き上げてくれるものなのです。

働く君に贈る25の言葉』佐々木常夫

これを読んだとき、それまでの会社を思い出していた。2社、とくにお世話になったなと振り返る。いずれにも「自分を磨いている」人が、確かにいた。そしていずれの会社も、自分の退職後に採用活動も事業内容も順調に拡大していた。「自分を磨く人」が増えた結果や努力が、形として残ったのだと思う。

翻って、そうではない組織があったことも確かだ。ここで書いたように、話をしていてやたらとネットから仕入れた情報が多い*と個人的に感じる人もいた。大多数の従業員や応募者が知りたいのは、自分と話している相手がこれまで何を経験してきて、これからどうしようとしているか、さらに自分には何をもたらすかの具体エピソードであろう。それをやらない、できない人が集まっているとどうなるか?採用活動が停滞し、事業内容も売上見込みが立たず、頓挫をきたす。わだかまりを抱えた社員は去っていく。これらを食い止めるのも軌道修正するのも、マネジャー職には無理な話だ。もし読者の中にいたら、やろうとしないほうがよい。その熱意は別の環境でご自分に向けてほしい。
(*…見ているソースが同じなんだろうなという気付きw)

ちなみに何をもって「自分を磨く」かだが、勤めているうちは顧客の反応だけ指針にしていた。結果的にそれが会社の「財布」につながるからだ。会社の「財布」につながるからこそ、従業員の昇給や賞与へのゆとりも出てくる。
退職を告げたあとは、チームメンバーからのアクションも指針にしていた。個別で内心を打ち明けてくれた方がいたことは、それまでの自分の働きぶりについて、少なくともその人にとって正しい方向だったことが分かり、安堵した。一方で、それまでの姿勢を一般の従業員は見ているのだなと、己を顧みる機会になった。

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