聖教新聞 名字の言 渋沢栄一が重視した“小事” 2024/06/03
1カ月後の7月3日、新紙幣の発行が始まる。1万円札の肖像画は、「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一だ▼銀行の創立や鉄道の敷設といった“大事”を成した人物だが、重視したのは“小事”であった。渋沢は言う。人は小さな物事をバカにすることがあるが、これは考え違いだ。一通の手紙を書くにも「(私は)そのことに集中し、他のことは決して思ったり考えたりしない」と(竹内均編『渋沢栄一「生き方」を磨く』三笠書房)▼先日、ある女性部員が小さなカードを見せてくれた。56年前に同志から手渡されたもので「静かであるが深い人 やさしいが強い人 平凡であるが英知の人……君の未来に栄光あれ」と記されていた▼当時は入会間もない頃。自分の幸福を願ってくれる同志の慈愛が心に染み、その後もこの言葉を抱き締めて幾多の宿命を乗り越えてきた。結婚する娘にも、同じ言葉を贈ったという▼御書には「小事つもりて大事となる」(新2046・全1595)と。自分の思いがなかなか相手に伝わらないこともある。それでも、今できる励ましや祈りを積み重ねていけば、その真心は必ず相手に通じ、大きな希望となっていく。きょうも一つの出会い、一本の電話に、誠意を尽くしたい。(枇)
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