次の恋 3
LINEでやりとりする日々が始まった。
内心ではトモくんを好きでたまらない。
だけど、まだ顔も見たことのない人だから
顔を見たらこの気持ちは消えてなくなるかもしれない。
トモくんに写真を見せてと言えなくて
ある日こちらから自分の写真を送った。
自撮りは恥ずかしいしわざとらしい気がして
出先で息子に撮ってもらった写真。
大きなパフェを前に自然でいい笑顔で撮れていたから
これなら見られてもいいかも…と思って送った。
「さっき大きなパフェを食べてきたよ!」
写真のあとにこんなコメントも送っておいた。
ガッカリされたかな…
私は一般的には決して綺麗でも可愛くもない。
自分に自信がない。
だから、写真を送ったのは、嫌われる覚悟ができたからだった。
これ以上踏み込んだら危険。
そう、自分にブレーキをかけるため。
すぐ既読になる…
心臓がドキドキして体に力が入らない。
トモくんから返事が届いた。
そこには、想像していたのとは全然違う男性の写真があった。
想像してた以上に素敵な男性だった。
これはけんさんの時とは逆のパターン…
もっと好きになってしまう…
「写真ありがとう!!ずっと〇〇ちゃんの顔が見てみたくて、でも言い出せなかった。
男らしくなくてごめん。
思い描いてた以上に綺麗で驚いてる…
笑顔がすごく可愛い。
こんなしがないおっさんとLINEしてるなんて
ガッカリさせてしまうかもしれないけど
俺の写真も送るね。
これは先月娘にとってもらった写真だよ。」
背の高さは聞いていた。
体型も、なんとなく想像できる情報をもらってた。
だけど、顔だけは抽象的な表現しかできなくて
お互いに伝えきれてなかった。
こうやって顔を見たことで
私たちは一気に気持ちが盛り上がってしまった。
LINEのやりとりはさらに頻度を増して
ほぼ1日中会話をしている状態になった。
「〇〇ちゃん、俺、〇〇ちゃんとのこの会話が楽しくて、LINEが来るのが待ち遠しくて
顔を見たらもう、気持ちが高まりすぎて
抑えられなくなってる。
前のパパさんのことで傷ついた〇〇ちゃんに
こんなことを伝えるのはダメだってわかってるけど
どうしても言わずにいられない。
俺、〇〇ちゃんのことが好きなんだ。
嫁さんも子供も大切だけど、〇〇ちゃんがいない生活はもう考えられない。
だから、友達でいい。ずっとこうして俺につきあって欲しい。」
胸がギューーーーッと締め付けられた。
こんなに素敵な告白はされたことがなかった。
私の気持ちに寄り添ってくれて
友達でもいいと言ってくれる優しさ。
私も素直に返信した。
「トモくん、ありがとう。
私ももうずっと前からトモくんのことが好きでした。
前の人のことがあって、またすぐに男の人に惹かれるなんて、自分でも無節操だと思う。
でも、私も同じ気持ち。
トモくんがいない生活は考えられないの。
トモくんが奥様や娘さんのことを愛してるのは知ってる。
だけど、心の片隅にでもいられるなら
私は嬉しいです」
お互いに気持ちを伝えることができて
抑えていた感情が爆発したように
やりとりが情熱的なものになっていった。
電話で声を聞かせてもらうと
すごく低くてダンディーな声で
さらに恋心が募った。
私たちはすぐには会えない遠距離に住んでいる。
会いたい…
でも会えない…
そのジレンマに陥る日々でもあった。
「〇〇ちゃん、Skypeしよう」
ある日そう提案された。
動いているトモくんを見られる。
嬉しくて二つ返事でOKした。
平日の昼間、子供たちが幼稚園に行っているタイミングで
トモくんはカフェに入り、Skypeでつながる。
トモくんはカフェで声を出せないから
テキストでやりとりをすることになった。
いよいよ約束の日…
朝からそわそわする。
髪を整え、メイクもした。
「準備できたよ。繋いでいい?」
「いいよ」
Skypeの呼び出し音が鳴る。
繋ぐと、そこには動くトモくんがいた。
好きって気持ちが溢れて泣いてしまいそうになる。
こんなに人を好きになったのは初めてだった。
笑顔でタイピングするトモくん。
私は声で返事をする。
「〇〇、かわいい」
恥ずかしくてニヤけちゃうよ。
「かわいくてヤバい。なんでそんなにかわいいの?」
やめてよ!それは言い過ぎだよ。
トモくんも写真より断然かっこいいよ。
「〇〇の声も好きなんだ。」
低くてかわいくないでしょ?
「そんなことない。落ち着いた女性らしい声だよ」
照れちゃうからやめてよ。
今どこのカフェにいるの?
「職場の近くのスタバだよ。
いつも利用してる店」
そっか。お仕事大丈夫なの?
「このあと移動して打ち合わせあるけど、
それまで自由だよ。
〇〇は何してた?」
私は家事をしたあとトモくんに会うためにおしゃれしてメイクしてた(笑)
画面の向こうのトモくんが笑う。
笑うトモくんを見られたことが嬉しい。
Skypeってすごい。
「本当にかわいいな。触りたくなる。」
顔が赤くなるのがわかった。
一瞬で触れられる妄想をしている自分が恥ずかしい。
トモくんはすごくかっこいいよ。
職場でモテるでしょ?
「職場には俺より上のおっさんしかいないよ(笑)」
へぇー、そうなんだ。
「ニコニコしてる〇〇、ほんとかわいい」
かわいいしか言わないじゃん(笑)
そんな他愛のないやりとりをする。
幸せな時間…
トモくんが出発しないと行けない時間になった。
「お願い、またSkypeしてくれる?」
もちろん!こちらからもお願いします。
それ以降、トモくんがパソコンを開けるタイミングでは
常にSkypeで繋がるようになった。
お互い仕事をしたり、私も家事をする。
時々テキストで会話もする。
夜はトモくんの奥様が娘さんと寝た後、
私も子供たちを寝かしつけた後
ずっとSkypeで繋がって会話をした。
起きている時間のほぼ全て
お互いを感じて過ごす日々が始まった。
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