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【葉桜の季節に君を想うということ】

ミステリをそれなりに読んだような態度をとっているが、実際には、コナンとか金田一とか、ミステリもののアニメしか見てないよという人がいる。それが私だ。
子供の頃は本を読みたくて仕方なかったのだが、そうそう本を買ってもらえず、図書館に行こうにも、そこそこ有名な推理小説でも田舎すぎて蔵書がない。新刊を読もうと思えば、予約が何十件も入っており、読むまでに一年待ちというひどい有様だった。
だから、子供ながらに、ミステリのまとめ本みたいなものを借りてきて、それで読んだことにして満足するしかなかった。

そんな昔話はさておき、今はどうにか、読みたいと思える本を読めるようになった。あの頃から比べれば大人になったというのもあるし、ネットが発達し、Amazonで簡単に買えるようになったというのもある。スペースを取るのが嫌なら、電子書籍という手もある。
とにかく便利な時代になったものだ。
そうして、私はたまたま中古本のコーナーでこの本と出会い、子供の頃に何かのミステリ本で見たタイトルだなと気付き、購入を決意した訳である。
余談だが、ついでにペンギン本も2冊購入した。割と良い買い物をしたのではないかと思う。

https://www.amazon.co.jp/葉桜の季節に君を想うということ-文春文庫-歌野-晶午-ebook/dp/B0785DML94

『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午

一体、このタイトルにどんな意味が込められているのだろう。
そう思いながらページをめくる。
葉桜に関係のなさそうな季節。
そもそもミステリなのか?と思い始めて数十ページ程でようやくミステリらしい出来事が起こる。
入り乱れるように、情報とアクションが押し寄せる。
後半から終盤にかけて暴かれる怒涛のような真相には、一瞬混乱しかけた。
それほどまでに巧妙な罠が、技巧が、伏線がこの小説には仕掛けられている。

少し昔とはいえ、社会情勢等々の話題があり、序盤から中盤にかけてはキツい人には中々キツい内容かもしれない。
しかし、読み終えた頃には、木漏れ日のような希望の光が心に差すだろう。少なくとも私はそうだった。

そう思いながら、ふと葉桜の下を通った。
町では老若男女が行き交い、束の間の休日を楽しんでいた。

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