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映画『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』 (ネタバレ感想文 )父と子、監督とフィルムの物語

チャン・イーモウとも長いお付き合いで、個人的には『妻への家路』(2014年)以来。『紅いコーリャン』(1987年)とかデジタル・リマスターしてくれないかな。

私は、チャン・イーモウは「失われゆく文化を描く作家」だと思っています。いやまあ、外貨稼ぎの超大作とかも結構あるんだけどね。

チャン・イーモウはしばしば「文化大革命」を舞台にし、「文化大革命で失われた古き良き中国文化」を描写することが多かったと思うんです。
もちろんこの映画でも、文化大革命に対する批判的な視点があると思います。
でも本作は、「映画」それも「フィルム」そのものを「失われゆく文化」として描いているように思えます。
「フィルム映画を皆で一緒に観る」という文化が失われつつある、という主題。
彼は、カンヌ映画祭60回記念オムニバス映画『それぞれのシネマ』(2007年)でも、「映画をみる」というタイトルで古き良き時代の映画鑑賞を描いていました。

一方、この映画のストーリーは「父と子の物語」と言えると思います。
「親子」ではなく「父と子」。
実際この映画で「母親」は出てきませんし、物語上の「母性」も描かれません。

なので、「父と子」の関係と「監督と作品」という映画の関係を重ねているように思えるのです。

スクリーンを観て一喜一憂し、一緒に歌う観客の姿。
36mm映写機にフィルムをセッティングしたり、フィルムを繋ぐ丹念な描写。

チャン・イーモウが、映画のデジタル化や配信に対してどう思っているかは分かりませんし、この映画を観ても特に否定的な印象は受けません。
ただ、「失われていく文化」として「残したい」と思ったことはひしひしと伝わってきます。
(映画が中国共産党のプロパガンダに利用されたことも残したかったのかもしれないけど)

監督:チャン・イーモウ/2020年 中国(日本公開2022年5月20日)

(2022.05.28 TOHOシネマズ錦糸町にて鑑賞 ★★★★☆)

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