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映画『TITANE/チタン』 (ネタバレ感想文 )母親不在の物語

なんだか最近、イカレポンチな映画が観たくて、『ナイトメア・アリー』や『アネット』を観たんですが、イカレポンチ大本命はこの映画。ただ、思っていた以上に嫌な映画だった。奇天烈きてれつというよりイカれた映画。
ジェーン・カンピオンに続くカンヌ・パルム・ドール受賞二人目の女性監督ジュリア・デュクルノー。デヴィッド・クローネンバーグの影響を受けているそうですが、クローネンバーグ苦手なんだよねえ。それにボディ・ホラーは痛くて嫌だ。

私はこの映画を「母親不在の物語」と読み解きました。「母性否定」と言ってもいいかもしれません。
この映画の主人公が関わるのが、常に「父親」なんですね。実の父親と偽の(成りすまし先の)父親が出てきますが、両方ともに登場する「母親」は非常に出番が少ない。少ないばかりでなく、物語上の「母親」としての役割すら担っていない。
いや、この主人公そのものが「母性」を否定します。
男に成りすますばかりではありません。乳房や妊婦としてのお腹を締め付けるのは、女性「性」封印の象徴です。最後は薄っすらと髭さえ生え、生まれた子供をその手に抱くこともしない。

自動車は「男」の象徴。車の横で踊るショーガールなんて典型例。
実は消防車も同様です。マッチョな消防士たちの「男根祭」の神輿です。
そんな男の神様の上で、ショーガールが下品なセクシーダンスをするなんて、マッチョ野郎は幻滅です。耐え難い屈辱と言ってもいい。
そしてこのシーンは、女を「性」の対象でしか見ない男どもに対して、女の「本能」が勝る瞬間でもあり、敗れる瞬間でもあるのです。

そう考えると、私が「ゴリゴリのフェミニスト映画を撮る人」と評しているジェーン・カンピオンに続く二人目の女性パルム・ドール監督というのも、「さもありなん」と思います。

あと、これ、新手の『フランケンシュタイン』だと思うんですよ。
ある意味、正統派「怪物の悲哀物」。

監督:ジュリア・デュクルノー/2021年 仏(日本公開2022年4月1日)

(2022.04.16 ヒューマントラストシネマ有楽町にて鑑賞 ★★★★☆)

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