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映画『ガンパウダー・ミルクシェイク』 (ネタバレ感想文 )道具としてのフェミニズム。

「ガンパウダー・ミルクシェイク」って言いたいよね。声に出して言いたい。ちなみに監督はイスラエル出身だそうです。
楽しく観ましたよ。主人公絶対死なない系の安心感。

私、「女殺し屋もの」好きなんです。だから観に行ったんですけどね。
ただ、個人的な好みを言えば、「殺し屋」って「バトル」じゃないんだよなあ。

たしかに、『キック・アス』(2010年)のバトル美少女ヒット・ガールは文字通り私の心にヒットしたんですが、あれは「殺し屋」じゃなくて「ヒーロー」だからね。クロエちゃんの魅力とマシュー・ヴォーンの力量に負うところも大きかったし。実際、監督が代わった続編『ジャスティス・フォーエバー』(13年)は何も覚えてない。クロエちゃんが可愛かったことしか覚えてない。

最後はバトルに至るとしても、「暗殺の緊迫感」って必要だと思うんです。
その点、『ニキータ』(1990年)は秀逸だった。あれでリュック・ベッソンを買いかぶっちゃったんだよな。『LUCY ルーシー』(2014年)はヒドかったぞ、ベッソン。マジでヒドかったぞ。
そういうわけでこの映画、「緊迫感」はないんですよね。そもそも暗殺もしないし。

あと、「女殺し屋」は「哀しい過去」を背負っているというパターンもある。
『ニキータ』もそうですし、アンジー主演の『ソルト』(2010年)なんかも典型例。ジョー・ライト『ハンナ』(2011年)なんてのもあったな。あと私はインド映画『マッリの種』(1999年)(ビデオ販売時のタイトルは『ザ・テロリスト 少女戦士マッリ』)なんてのも観ている。
この『ガンパウダー~』は、「母に捨てられた」という一見「哀しい過去」を背負っているんだけど、それは「母娘のシスターフット」の伏線でしかない。

あるいは、「殺す目的」に「個人的な理由」が加わると燃えるんですけどね。特に「復讐」。復讐は爆燃え。
『キル・ビル』(2003年)とかね。やっぱりタランティーノは分かってるんですよ。パク・チャヌク『親切なクムジャさん』(2005年)とか超絶大好き。あとはジョディ・フォスター主演の『ブレイブ・ワン』(2007年)とか。
そう考えるとこの映画、「少女を助ける」ことが目的で、本来は「殺す」ことが目的じゃないんですよね。
まあ、原型は『グロリア』(1980年)なのでしょう。でもジーナ・ローランズおばさんは「防衛」のために銃を抜くのであって、「殺し屋」じゃないんだな。

この映画の監督が、その手の映画の「通」だというので、こっちも意地になって「自慢」しましたけどね。なにか本質がズレてる気がします。

「フェミニズム」に関しても同様です。
『チャーリーズ・エンジェル』的な、若さとかお色気といった女性の「性」を売りにしない(男女間の恋愛要素もない)女性アクションは、今時だし立派だと思いますが、フェミニズムの扱いは、本質ではなく、娯楽の「道具」にすぎない。

「俺はフェミニストだ」という敵のボスは女系家族で孤立しているという「ネタ」に過ぎないし、ヴァージニア・ウルフを始め取り上げる本の作家が女性ばかり(だと思う)のだって、好意的に見れば暗喩だけど、物語の本質に関わるわけじゃない。

「組織」を「男社会」に見立てて、「(男は)都合のいいようにルールを変える」と言い、それと「対等に戦う」ことがこの映画の根本姿勢。
仕方がないよね、監督が描きたいのは「女性のアクション」だから。
男性がやるアクションを「女性がやる」という趣向の映画だから。
「女性だからできる戦い方」「女性にしかできない戦い方」というわけではない。
少しはそういう「知恵」があっても良かったと思うんですよね。
「思い付いた」って、ウェイトレスに扮装する程度かいっ!

監督:ナボット・パプシャド/2021年 仏=独=米(日本公開2022年3月18日)

(2022.03.21 kino cinéma立川髙島屋SC館にて鑑賞にて鑑賞 ★★★☆☆)

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