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映画『ギルバート・グレイプ』 (ネタバレ感想文 )画面が北欧だ

監督:ラッセ・ハルストレム/1994年 米

名作と言われる映画で観てない作品はまだまだたくさんあるもので、本作もその一つ。今回、映画館で上映されたので足を運びました。
12ヶ月連続上映プロジェクト<12ヶ月のシネマリレー>に感謝。

正直言うと私は、『タイタニック』(1997年)以降デカプーを笑い者にしていますし、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003年)以降ジョニデも笑い者にしてるんですが、まさかこの映画の時点ではこんなにいい役者だったとは。
この映画では「ママを笑い者にさせない」言うとりましたが、後々自分達が俺の笑い者にされるとは。ワッハッハ。

そして監督のラッセ・ハルストレム。
私の中で絶妙に「微妙」な監督。
スウェーデン時代の方がいい映画撮ってたように思うんですけどね。
ラッセ・ハルストレムとウォルフガング・ペーターゼンはハリウッドに渡らない方が良かったと思うのは私だけでしょうか?

動けない(動かない)男の話です。
女達は彼の元を去り、知的障害の弟までが給水塔へ登って天へ去ろうとします。

舞台はアイオワ州のエンドーラという小さな田舎町。
時代設定はリアルタイムの90年代なんだろうか?
この時代と場所は重要なポイントで、トレーラー(キャンピングカー)の持つ意味は、クロエ・ジャオ『ノマドランド』(2021年)のそれと大きく異なるはずです。
少なくともこの映画では、家から離れられない男の前に「家ごと移動する渡り鳥」として登場します。
そうです、彼女は典型的な「鶴の恩返し」なのです。この地に舞い降りて、主人公たちに影響を与えて去っていく。

そして場所。
アメリカ映画って、基本、ロスかニューヨークなんですよ。
ただ広大な国ですから、「ロードムービー」というジャンルは確立しています。また、『真夜中のカーボーイ』(1969年)のように田舎から都会に出てきた者の物語はあります。
しかしこの映画は、地方を舞台にした先駆け的な作品なんじゃないかな?違うかな?
コーエン兄弟が『ファーゴ』で北部(ミネソタ州ミネアポリス)の土着性を描いたのが1996年。
おそらく90年代、いや、80年代辺りからアメリカ国内の「地域格差」が浮き彫りになってきたのでしょう。
次第に「田舎」を舞台とした映画が多くなります。
『スリー・ビルボード』(2017年)なんかが代表例。

ただ、アイオワ州出身の原作・脚本のピーター・ヘッジズはともかく、スウェーデン人のラッセ・ハルストレムがどこまでアメリカの田舎の「土着性」を理解していたのか分かりませんけどね。コーエン兄弟は抜群に巧いけど。
ラッセ・ハルストレムは『サイダーハウス・ルール』(1999年)でもメイン州という田舎を舞台にしていますから、ハリウッドにもニューヨークにも毒されていないという点では適任なのかもしれません。
しかし私は、どうもこの作品も(ずいぶん昔に観た『サイダーハウス・ルール』も)アメリカに見えないんですよ。見えないというか、アメリカの空気感じゃないと言うか。いやまあ、アイオワ州もメイン州もその空気感を知りませんし、ラッセ・ハルストレムがスウェーデン人だという先入観もありますがね。

本来なら「社会派」であってもいい素材を「北欧オブラート」で包んだ結果、万人受けする「いい話」に仕上がった感がある。
ああ、そうか。商品としてはそれが正解なのか。
意図的に「社会派」を避けた作品なんだな。
その結果、私にとってツボを刺激してくれない「絶妙に微妙」な作品。

(2022.08.06 ヒューマントラストシネマ渋谷にて鑑賞 ★★★☆☆)


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