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映画『巴里のアメリカ人』 (ネタバレ感想文 )お前、画家よりダンサーに向いてるよ

まったく私事わたくしごとで恐縮ですが、ガーシュインの愛聴CDを所持しておりまして。CDってのが時代を感じさせるな。実際、30数年前に購入したものですからね。
「ラプソディー・イン・ブルー」と「パリのアメリカ人」のカップリング。
演奏はニューヨーク・フィルハーモニー。指揮はレナード・バーンスタイン。
そう、あの『ウエスト・サイド物語』/『ウエスト・サイド・ストーリー』の音楽の人です。

そもそもウディ・アレンの『マンハッタン』(1979年)が好きで、その映画で引用されていた「ラプソディー・イン・ブルー」が欲しくて買ったんですが、交響詩「パリのアメリカ人」もよく聞いていました。いや、今でも聞きますよ。しかし、曲はなじみでも映画を観ていなかったので、今回「テアトル・クラシックス」で上映(リマスター版なのかな?)していたので映画館へ。劇場で鑑賞できたことに感謝。

そしたらさあ、既に観てた(笑)
たぶん10代に観て、酷評していました(笑)
すっかり忘れてて、今回30数年ぶりに新鮮な気持ちで鑑賞したら、めちゃくちゃ面白かった。評価爆上がり。話自体はショーモナイんだけどね。

ビリー・ワイルダーが『昼下がりの情事』(57年)でパロディーにしたんじゃないかと思うような冒頭の導入ナレーションからワクワクする。
寝起きジーン・ケリーのダンスのような室内セッティングのアイディアに感心する。
川辺で二人が踊るシーンは、ウディ・アレンが『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(97年)でオマージュしたんじゃないかと思うような美しさ。
話自体はショーモナイんだけどね。あ、二度も言っちゃった。

私はジーン・ケリーを「体操のお兄さん」と評しているんですが、
「生身の凄み」ってあると思うんです。
私が年をとったせいなのか、コンピュータで何でも処理できちゃう世の中になったせいなのか分かりませんが、最近すごく感じます。
ある意味、ブールス・リーの『燃えよドラゴン』(73年)と同じ。
ストーリーとかなんとかじゃなくて、個人の身体能力に魅了される。
「体操のお兄さん、すげーな」って素直に思います。体操のお兄さんじゃないけど。

どうやら元々は「曲先きょくせん」だそうです。
ガーシュインがパリの喧噪をイメージして1920年代に作った交響詩「パリのアメリカ人」という曲が先にあり、それに合わせて、後から映画用にダンスやストーリーが作られたとか。
だいたいガーシュインの曲は狂ってるからね。18分あんだぜ、この曲。映画も狂ってるよね。18分間、一言の台詞もなく踊りまくるからね。

他の曲もいいですよね。
「I Got Rhythm」はテレビCMなんかでも使われるお馴染みの曲。
「'S Wonderful」は今じゃジャズ・スタンダード。超有名曲「You'd Be So Nice to Come Home To」を収録した超有名アルバム『Helen Merrill With Clifford Brown』で、ニューヨークのため息=ヘレン・メリル版の「'S Wonderful」が聞けるよ。

監督:ビンセント・ミネリ/1951年 米

(2022.03.12 シネスイッチ銀座にて鑑賞 ★★★★☆)

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