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正しく世界を見よう―ファクトフルネス―

我々はデータを正しく読み取れていない?!

インターネットの普及が進み、高度に情報化した現代において正しくデータを読み取ることは、最重要のことの一つでしょう。しかし、科学者や投資銀行のエリート等の頭の良い人たちですら、この世界を偏った見方で捉えています。この驚愕の事実に対して我々は、どのように対処すべきでしょうか..?

この問いに対して、人間の持つ本能の不利な側面に気付き、本能に逆らうことで、データを正しく読み取りましょうと提案するのが本書の大きな主題でしょう。


本書は、人間の持つ10個の本能を取り上げ、それらの本能の弊害とその対処法を論ずる書籍です。どの本能も、人間が自然界で生きてきたその証左だと言えるものだと思います。しかし、自然界で役立った本能も、今の我々には、ネガティブなインパクトを与えてしまうのです!本能を媒介して情報を認知することは、確かに情報をありのままに取り込んでるものだとは限らないと言われると、確かに正しいと思いますよね...。

弱肉強食の自然界では、情報をそのまま受け取るよりも、マイナス要素を増大する形で情報を受け取るほうが、生存には有利でしょう。例えば、アフリカのサバンナで生きている人が、近くにまだ新しい、ライオンの足跡を見つけたとしましょう。「ライオンの足跡がある。この情報からどういう論理的展開が出来るだろうか...?」とじっくり考えるよりも、「もしかすると、ライオンに襲われるかもしれない(マイナス要素)から、ここから今すぐ立ち去ろう」と即座に考えるはずです。このように、情報をありのままではなく、より現実よりもネガティブな形で受け取る方が、弱肉強食の世界では生存に有利です。しかし、今の人間の暮らす社会では、そのネガティブに情報を読み取る本能が独り歩きして、逆に人々に不利を被らせている。これが、ファクトフルネスの著者が考える本能の特徴だと思います。

犯人捜し本能

本書には、10個の本能に対するファクトフルネスが扱われていますが、特に昨今のコロナ禍で、暴走してしまっている本能は、この”犯人捜し本能”ではないでしょうか?誰が犯人かを血眼になって探すことは、問題の根本的解決にはなりません。スケープゴートを探すぐらいなら、起こった事態の原因を探すことを優先すべきだ。これが筆者の主張です。誰かのせいにしたい、という本能にまず気付くこと。その理解の上で、情報を偏りなしに認知すること。

まぁ個人的には、コロナの感染拡大の原因を探ることも大事ですが、これからどう対処・共存していくかの方が、大切だと考えていますが...(トランプ大統領は、まさにコロナ禍の原因の中国を過度に非難してしまっていますし、起こった原因の追究も過度になされると、犯人捜し本能に囚われてしまいそう...)。

自分の世界の見方は中立だと思っていたが...

本書は、事実をきちんと認識できているかを試す問題が冒頭に13問用意されています。私は、自分の物の見方は偏っていないとある程度自負していたので、意気揚々と問題を解いてみました。すると、ことごとく間違っていたのです!!なので本書は「いやぁ、自分はそんなことないわぁ。ちゃんと世界を正しく偏らずに見れてるし!」と思っている方々に是非読んでいただきたいです。本書を読めば、世界をクリアに認識することが可能になるでしょう。本書は大ベストセラーなので、既に読まれた方も多いと思いますが、自分の思考整理も兼ねて書評しました。

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