71.携帯料金プランは、現代アートを超越した話
自分の物分かりが悪いのか、相手の説明が悪いのか。
そんな葛藤の狭間で苦しんだことはないでしょうか。
最近、僕は携帯電話の料金プランを「ahamo」に変えました。ご存知の方も多いと思いますが、「ahamo」とはNTTドコモが発表した新料金プランの名称です。
簡単に補足しますと、少し前から携帯キャリア3社はオンライン申込専用の新料金プランを立て続けてに発表しています。
・NTTドコモは「ahamo」
・auは「povo」
・SoftBankは「LINEMO」
おおよそ3,000円前後で月に20GBを使用できる、というのがざっくりとした概要です。この他に格安simのスマホの料金プランも数多あり、何だか混沌としている状況です。
携帯料金や保険の費用。
月々の家計を圧迫する固定費にもかかわらず、見直しのハードルが高すぎる気がします。
理由は簡単で「よくわからないから」です。
結局何がお得で、何が損なのか、正直自分だけでは判断がつきません。今回僕が携帯料金のプランをahamoに変えたのも妻に「背中を押された」からです。もちろん僕も、自分が入っていたプランよりahamoに変えた方がお得、というのは頭では理解していました。
しかし、まず「変え方」がわからない。
調べてみると、どうやらドコモの店頭では変更ができず、オンライン手続きでのみ変更が可能とのこと。早速、スマホで変更の手続きを行ってみても、笑ってしまうほど難しく、一人ではどうにもできない袋小路に入ってしまいました。
最終的には妻に僕のスマホを預け、全面的に操作してもらい、無事ahamoに変更することができました。
ただし順調に、というわけではなく、僕よりもネット機器に強い妻でさえも苦戦したようで、変更が完了した際は胸を撫でおろしていました。
「こんなの難しすぎるよ。」
妻はポツリと呟きます。
その妻の一言で僕も胸を撫でおろします。
ahamoへの変更が無事終わったこと、にではなく、妻がやっても難しい操作だった、という事実に対する安堵です。
「上手くいかないこと」に対して、自分の物分かりの悪さがすべての原因ではない、とわかることは一つの救いです。
自分の知識が浅い分野の説明を誰かから受けるとき、説明の仕方が悪いのか、自分の物分かりが悪いのか、判断することが難しい場合があります。
振り返れば、そういった場面は人生のあらゆるときに起こりえました。
学校で初めての公式を習うとき。
教習所で初めて運転の仕方を教えてもらうとき。
入社時に先輩から初めて仕事の指導を受けるとき。
よっぽどあからさまではない限り、「相手側が悪いんじゃないか、、?」と疑うことは少ないのではないでしょうか。
しかし僕の短い人生経験の中で、最も如実に「自分の物分かりの悪さ」を疑ってしまう瞬間は先に挙げた例のどれでもございません。
僕が最も如実に自分自身を疑ってしまう瞬間は「現代アート」と呼ばれるものを見たときです。
美術館に飾られた、何を現わしているのかよくわからない彫刻。
何が描かれているのかよくわからないカラフルなドリッピングアート。
白い無垢な空間の隅にぽつりと置かれた球体。
そんな芸術と向き合ったとき、僕はまず「自分の感受性」を疑ってしまいます。
「考えるな、感じろ!!」
と無言のプレッシャーを与えられながら、何も感じられない自分を恥じてしまうのです。
しかしながらすべての芸術がそう、というわけでもありませんでした。
大阪に住んでいた大学生時代、万博公園で初めて「太陽の塔」を見たときは圧倒されました。
何が凄いのかはわからないけれど、禍々しい生命力を感じることが出来ました。
岡本太郎の尖りまくった著書も読んでしまったし、太陽の塔がデザインされた小さなキーホルダーも買ってしまいました。
岡本太郎という人間の生き様、太陽の塔に込められた意味やデザイン性。
そういったことへの知識を少し蓄えた気になるだけでも、僕の太陽の塔への見え方が変わっていきました。頻度はかなり減ったけれど、今でも大阪に行くたびに、太陽の塔を見たくなります。
現代美術は背景に込められた意味を認識して、初めて議論ができるし、向き合えるようになるのだと思います。
「世界で最も人気のストリートアーティスト」とされるバンクシーにしてもそうでしょう。
背景を知らずに絵だけを見て、世間で言われているような価値を見出せる人はいないのではないでしょうか。
パレスチナの分離壁に「花束を投げる暴徒」の巨大な壁画を描き残した歴史的背景を知って初めて、人々がそこに集まる理由、その絵に感謝する人がいる理由がわかるのではないでしょうか。
新料金プランの「ahamo」
3キャリアが一斉に似たような料金プランをリリースした背景。
ドコモ店頭では一切「ahamo」への切り替えを助けてくれない理由。
不明点の問い合わせはオンラインチャットのみになっている事情。
もし、諸々わかった上で、「ahamo」への切換えを苦戦していたとしたらどうでしょう。
残念ながら、どうもこうもありません。
そんなこと知ったこっちゃない!
と僕一人だけなら発狂していたかもしれません。
妻の手助けが無ければ、docomoを解約して格安simのスマホに乗り換えていたかもしれません。
携帯の料金プラン。
個人的には。
現代アートよりも、かなり手強いシステムでした。
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